判旨
仮処分を取り消す旨の第一審判決が言い渡されたとしても、当該仮処分が当然にその効力を失うものではない。
問題の所在(論点)
仮処分を取り消す旨の第一審判決の言渡しにより、当該仮処分は当然にその効力を失うか。また、当事者が明示的に主張していない事実を裁判所が判断の基礎とすることが許されるか(弁論主義との関係)。
規範
民事保全手続において、仮処分決定を取り消す旨の判決が言い渡されたとしても、その判決の言渡しによって直ちに仮処分決定の効力が当然に消滅するものではない。
重要事実
債権者(被上告人)が申し立てた仮処分について、第一審判決により仮処分が取り消された。しかし、その後、当該仮処分の本案訴訟の第二審において債権者が勝訴した事実が、原審(本件仮処分の取消しをめぐる抗告審等)の口頭弁論期日において証拠(疏乙第18号証)とともに陳述された。債務者(上告人)は、第一審の取消判決により仮処分は当然に失効していると主張して上告した。
あてはめ
仮処分取消判決には当然の失効を認める効力はないため、本件仮処分は有効に存続している。また、事実認定については、被上告人が口頭弁論期日において本案訴訟の勝訴事実を立証するために証拠を提出・陳述しており、弁論の全趣旨に照らせば、当該事実は原審において適切に主張されたものと認められる。したがって、原審がこの事実に基き「事情の変更」を否定した判断に弁論主義違反の違法はない。
結論
仮処分取消判決の言渡しによって仮処分の効力が当然に失効することはない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
保全執行の効力持続性に関する基本判例。取消判決が出ても、執行取消手続(民事保全法56条等参照)や確定を待たなければ当然には失効しないという実務上の取り扱いを裏付ける。また、証拠提出に伴う事実の主張の認定(弁論主義の緩和ないし合理的な解釈)についても参照される。
事件番号: 昭和25(オ)121 / 裁判年月日: 昭和27年4月4日 / 結論: 棄却
一 仮処分により保全される債務者の権利が金銭的補償を得ることによりその終局の目的を達し得る事情と、債務者が仮処分により普通に受ける損害よりも多大の損害を被るべき事情とは、それぞれ独立して別個に特別事情となるものであるから、特別事情による仮処分取消申立事件において、裁判所が後者の事情を顧慮せずに前者の事情だけで仮処分を取…