1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない。 2 インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合において,上記閲覧者が当該表示された画像をクリックすれば,上記著作者名の表示がある元の画像を見ることができるとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記投稿をした者が著作者名を表示したことにはならない。 (1) 上記著作者名の表示がある元の画像は,上記ウェブページとは別個のウェブページで見ることができるにとどまる。 (2) 上記閲覧者が当該表示された画像を通常クリックするといえるような事情はうかがわれない。 3 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求をする者が,インターネット上の情報ネットワークにおいてされた同人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記写真に係る氏名表示権を侵害された場合において,上記投稿により,上記画像ファイルへのリンク及びその画像表示の仕方の指定に係るHTML(ウェブページの構造等を記述する言語)等のデータが特定電気通信設備の記録媒体に記録されて上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に送信され,これにより,リンク先のサーバーから上記端末に上記画像のデータが送信された上,上記端末において上記指定に従って上記画像が一部切除された形で表示された結果,上記画像に付された著作者名が表示されなくなり,上記氏名表示権の侵害がもたらされたという事情の下では,上記投稿をした者は,同項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」上記開示請求をする者の権利を侵害したものといえる。 (2につき補足意見がある。)
1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要するか 2 インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に,上記閲覧者が当該表示された画像をクリックすれば,上記著作者名の表示がある元の画像を見ることができるとしても,上記投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例 3 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求をする者が,インターネット上の情報ネットワークにおいてされた同人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記写真に係る氏名表示権を侵害された場合に,上記投稿をした者が,同項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」上記開示請求をする者の権利を侵害したものといえるとされた事例
(1~3につき)著作権法19条1項 (1につき)著作権法21条,著作権法22条,著作権法23条,著作権法24条,著作権法25条,著作権法26条,著作権法26条の2(第2項を除く。),著作権法26条の3,著作権法27条 (2につき)著作権法19条2項 (3につき)特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条4号,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項
判旨
ツイッターのリツイートにより、リンク先の画像がトリミングされ著作者名の表示が消えた場合、リツイート者は著作権法19条1項の「著作物の公衆への提示」を行ったものとして、氏名表示権侵害が成立する。
事件番号: 平成21(受)609 / 裁判年月日: 平成22年4月13日 / 結論: その他
1 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者は,当該開示請求が同項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大…
問題の所在(論点)
1. リツイートによりトリミングされた画像が表示されることが、著作権法19条1項の「提示」に当たるか。2. システムの仕様による自動的なトリミングであっても、リツイート者に氏名表示権侵害が認められるか。3. リツイートによるリンク表示が、プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の流通」および「侵害情報の発信者」に該当するか。
規範
1. 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、著作権(21条〜27条)の侵害を伴う場合に限定されず、著作者の人格的利益を保護する趣旨から広く解される。2. リンク先で著作者名が表示されていても、リンク元のウェブページ上で表示されず、ユーザーがクリック等の別操作をしない限り目に触れない状態であれば、著作者名を表示したことにはならない。
重要事実
写真家である被上告人が撮影した写真(隅に氏名表示あり)が、第三者により無断でツイッターにアップロードされた(元ツイート)。その後、別のユーザーら(本件各リツイート者)がこれをリツイートしたところ、ツイッターのシステムの仕様により、タイムライン上の表示画像が自動的にトリミングされ、氏名表示部分が消失した状態で表示された。インラインリンクの仕組みにより、ユーザーが画像をクリックすれば氏名表示のある元画像を確認できたが、通常クリックされるような事情はなかった。被上告人は、氏名表示権侵害を理由に、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を求めた。
あてはめ
1. リツイートによりユーザーの端末画面上に本件画像を表示させたことは、客観的に著作物の「提示」に当たる。2. システムの仕様であるとしても、リツイート行為によって現実に氏名表示のない状態を招いた以上、リツイート者の行為による侵害といえる。クリックすれば別ページで氏名が見られるとしても、本件ウェブページ上で表示されない以上、法19条2項の「著作者名を表示」したことにはならない。3. リツイートにより生成されたリンク表示データ(HTML等)は、表示の仕方を指定して氏名表示権侵害を直接的にもたらすものであるから、「侵害情報」に該当し、これを記録したリツイート者は「発信者」に当たる。
結論
本件各リツイート者は氏名表示権を侵害したといえ、プロバイダ責任制限法4条1項の開示要件を満たすため、上告(開示拒絶)は棄却される。
実務上の射程
インラインリンクやSNSの自動トリミング機能による権利侵害について、投稿者の主観やシステムの仕様にかかわらず、客観的な表示状態を基準に侵害を認めた。SNS上の拡散行為(リツイート)であっても、著作者人格権への配慮義務が否定されないことを示した重要判例である。
事件番号: 令和3(受)2050 / 裁判年月日: 令和5年1月30日 / 結論: 破棄自判
特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該権利の侵害が令和2年総務省令第82号の施行前にされたものであったとしても、プロバイダ責任制限法(令和3年法律第27号による改正前のもの)4条1項に基づき、当該権利の侵害に係る発信者情報として、上記施行後に発信者の電話番号の開示を請求することができ…
事件番号: 令和2(受)1442 / 裁判年月日: 令和4年6月24日 / 結論: 破棄自判
インターネットを利用して短文の投稿をすることができる情報ネットワークにおいて、ある者が建造物侵入の被疑事実により逮捕されたというその者のプライバシーに属する事実を摘示するメッセージの投稿がされた場合に、上記の逮捕の事実が、不特定多数の者が利用する場所において行われた軽微とはいえない犯罪事実に関するものであったとしても、…
事件番号: 令和5(受)1583 / 裁判年月日: 令和6年12月23日 / 結論: その他
1 プロバイダ責任制限法(令和3年法律第27号による改正後のもの)5条2項の規定は、権利の侵害を生じさせた特定電気通信及び当該特定電気通信に係る侵害関連通信が令和3年法律第27号の施行前にされたものである場合にも適用される。 2 インターネットを利用した情報ネットワーク上のアカウントにおいて他人の権利を侵害する投稿がさ…
事件番号: 平成21(受)1049 / 裁判年月日: 平成22年4月8日 / 結論: 棄却
最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。