1 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者は,当該開示請求が同項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ,損害賠償責任を負う。 2 インターネット上の電子掲示板にされた書き込みの発信者情報の開示請求を受けた特定電気通信役務提供者が,当該書き込みにより請求者の権利が侵害されたことが明らかでないとして開示請求に応じなかったことにつき,その書き込みは,侮辱的な表現を一語含むとはいえ,具体的事実を摘示して請求者の社会的評価を低下させるものではなく,特段の根拠を示さずに書き込みをした者の意見ないし感想としてその語が述べられているという事情の下においては,上記書き込みが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず,上記特定電気通信役務提供者に重大な過失があったとはいえない。
1 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者が損害賠償責任を負う場合 2 インターネット上の電子掲示板にされた書き込みの発信者情報の開示請求を受けた特定電気通信役務提供者が,請求者の権利が侵害されたことが明らかでないとして開示請求に応じなかったことにつき,重大な過失があったとはいえないとされた事例
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項,電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条4項
判旨
プロバイダ責任制限法4条4項に基づく損害賠償責任を負うのは、開示請求が1項各号の要件に該当することを認識し、又はその該当性が一見明白であって認識できなかったことに重大な過失がある場合に限られる。本件のような侮辱的表現による名誉感情侵害の事案では、文言のみから権利侵害の明白性が一見明白とはいえず、プロバイダ側の重過失は否定される。
問題の所在(論点)
プロバイダが裁判外の開示請求に応じなかったことにつき、法4条4項の「重大な過失」が認められるための判断基準、及び本件における重過失の有無。
規範
開示関係役務提供者は、侵害情報の流通による開示請求者の権利侵害が明白であること(法4条1項1号)等の要件に該当することを認識していたか、又は、各要件の該当性が一見明白であり、それを認識できなかったことにつき重大な過失がある場合にのみ、法4条4項に基づき損害賠償責任を負う。
事件番号: 平成21(受)1049 / 裁判年月日: 平成22年4月8日 / 結論: 棄却
最終的に不特定の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイダは,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。
重要事実
インターネット接続サービスを提供する上告人の利用者により、掲示板に「気違いはどうみてもA学長」との書き込みがなされた。学長である被上告人は、上告人に対し「気違い」との表現は人格攻撃であり侮辱に当たるとして発信者情報の開示を請求したが、上告人は発信者の不同意等を理由に開示に応じなかった。被上告人は、上告人が不当に開示を拒絶したことにつき重大な過失があるとして損害賠償を求めた。
あてはめ
発信者情報はプライバシーや表現の自由等に関わる情報であり、開示の判断には慎重さが求められる。本件書き込みは、具体的事実の摘示ではなく名誉感情侵害(侮辱)の問題にとどまる。侮辱行為が社会通念上許される限度を超えるかは、文言のみならず文脈や経緯を考慮する必要があり、一見して明白とは言い難い。したがって、裁判外で開示請求を受けた上告人にとって権利侵害の明白性を判断することは容易ではなく、開示に応じなかったことに重大な過失があったとは認められない。
結論
上告人に重大な過失があるとした原判決を破棄し、被上告人の損害賠償請求を棄却する。
実務上の射程
プロバイダの賠償責任を限定する際の標準的な規範。特に「名誉感情」という主観的な法益侵害の場合、表現自体の過激さだけでなく、文脈等を含めた総合判断が必要となるため、裁判外での開示拒否についてプロバイダの重過失が認められるハードルは非常に高いことを示した。
事件番号: 平成30(受)1412 / 裁判年月日: 令和2年7月21日 / 結論: 棄却
1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない。 2 インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウ…