1 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報は,参加申込者のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。 2 大学が講演会の主催者として学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号,氏名,住所及び電話番号に係る情報を参加申込者に無断で警察に開示した行為は,大学が開示についてあらかじめ参加申込者の承諾を求めることが困難であった特別の事情がうかがわれないという事実関係の下では,参加申込者のプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成する。 (2につき反対意見がある。)
1 大学主催の講演会に参加を申し込んだ学生の氏名,住所等の情報は法的保護の対象となるか 2 大学がその主催する講演会に参加を申し込んだ学生の氏名,住所等の情報を警察に開示した行為が不法行為を構成するとされた事例
民法709条,民法710条
判旨
学籍番号、氏名、住所等の単純な個人情報であっても、本人が望まない他者にみだりに開示されない期待は保護されるべきであり、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。本人の同意を得る手続が容易であるにもかかわらず、無断で警察に情報提供した大学の行為は、情報の適切な管理への合理的期待を裏切り、プライバシーを侵害する不法行為を構成する。
問題の所在(論点)
学籍番号、氏名、住所等の単純な個人識別情報が、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるか。また、大学が本人の同意なく警察にこれら情報を提供したことが、不法行為上のプライバシー侵害に該当するか。
規範
学籍番号、氏名、住所、電話番号等の個人識別情報は、それ自体は秘匿性の高い情報とはいえないが、自己が欲しない他者にはみだりに開示されたくないと考えることは自然であり、その期待は保護されるべきである。したがって、これらはプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。情報収集者は、本人の意思に反してこれら情報をみだりに他者に開示してはならず、開示について承諾を求めることが容易であった等の事情がある場合には、無断開示は情報の適切な管理についての合理的な期待を裏切るものとして、プライバシー侵害の不法行為を構成する。
重要事実
大学が外国要人の講演会を開催する際、参加希望学生から学籍番号、氏名、住所、電話番号を記載した名簿を作成した。警察(警視庁)から警備上の理由で名簿の提出を要請された大学は、内部での議論を経て、学生に事前の同意を得ることなく、名簿の写しを警察に提供した。名簿を提出された学生らは、講演中に抗議行動を行い現行犯逮捕された後、大学による名簿の無断提出がプライバシー侵害に当たるとして損害賠償を請求した。
あてはめ
本件情報は、学籍番号、氏名、住所、電話番号および「特定の講演会への参加希望」という情報を含んでいる。これらは単純な情報ではあるが、本人の合理的期待に基づきプライバシー保護の対象となる。大学は講演会の主催者として情報を収集しており、警備の必要性があったとしても、名簿記入時に「警察への提供」を明示して同意を求めることは容易であった。それにもかかわらず、特段の困難な事情がない中で無断で情報を開示したことは、学生側の情報の適正管理への期待を裏切るものであり、開示の目的の正当性や必要性を考慮してもなお、違法性を有すると評価される。
結論
学籍番号等の個人識別情報はプライバシーとして保護され、本人の同意を得る手続が容易であったにもかかわらず無断で警察に提供した大学の行為は、プライバシーを侵害する不法行為を構成する。
実務上の射程
自己情報コントロール権の構成までは踏み込んでいないが、本人の『合理的期待』を基準にプライバシーの保護範囲を広く認めた点に意義がある。答案上は、情報の性質(秘匿性の高低)と開示手続の容易性・代替手段の有無を相関的に検討する際の準拠枠組みとして活用できる。
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