1 インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の表現手段を利用した場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではない。 2 インターネットの個人利用者が,摘示した事実を真実であると誤信してした名誉毀損行為について,その根拠とした資料の中には一方的立場から作成されたにすぎないものもあることなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,上記誤信について,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があるとはいえない。
1 インターネットの個人利用者による名誉毀損と摘示事実を真実と誤信したことについての相当の理由 2 インターネットの個人利用者による名誉毀損行為につき,摘示事実を真実と誤信したことについて相当の理由がないとされた事例
(1,2につき) 刑法230条1項,刑法230条の2第1項
判旨
インターネット上のホームページに掲載された表現による名誉毀損において、摘示された事実を真実と誤信したことにつき相当の理由があるといえるためには、当該表現の特性を考慮しても、一般の出版物等と同様に、確実な資料・根拠に照らした調査確認が求められる。
問題の所在(論点)
インターネット上の表現行為による名誉毀損において、不法行為上の免責要件である「真実相当性」(事実を真実と信ずるに足りる相当の理由)の有無をいかに判断すべきか。情報の即時性や反論の容易性というネットの特性を考慮し、判断基準を緩和すべきかが問題となる。
規範
名誉毀損における真実相当性の判断基準は、表現媒体の特性によって異なるものではない。インターネット上の個人による表現であっても、一度なされた名誉毀損による被害の回復は容易ではなく、反論によって十分な回復が図られる保証もない。したがって、行為者が摘示事実を真実と誤信したことにつき相当の理由があるというためには、適切な調査を経て確実な資料・根拠に基づき真実と信じたことを要し、ネット特有の事情を理由に基準を緩和することはできない。
重要事実
被告(上告人)は、自ら開設したウェブサイトにおいて、宗教団体Xおよびその代表者Yに関し、他者のウェブサイト上の記事を引用した上で「カルト」「詐欺」等の表現を用いて誹謗中傷した。被告は、引用元の記事やインターネット上の他の情報を信頼したため真実と信じたと主張し、ネット上では情報の真偽を閲覧者が判断でき、かつ反論も容易であるため、不法行為は成立しないと争った。
あてはめ
被告は、他人のウェブサイト上の情報を漫然と信頼して引用し、過激な表現を用いて摘示事実を掲載したに過ぎない。情報の裏付けとなる確実な資料を収集したり、関係者に取材を行ったりした形跡は認められず、調査確認の程度は不十分である。ネット上での反論が可能であるとしても、その事実によって直ちに名誉毀損の被害が解消されるわけではなく、本件の調査の欠如を正当化する理由にはならない。したがって、真実と誤信したことにつき相当の理由があるとは認められない。
結論
被告には真実相当性が認められないため、名誉毀損に基づく損害賠償責任を免れない。上告棄却。
実務上の射程
個人の発信であっても、ネットの双方向性や即時性を免罪符にすることはできず、伝統的な報道機関と同等の調査義務(裏付け取材の必要性)が課されることを示した重要な判断である。
事件番号: 平成22(受)1529 / 裁判年月日: 平成24年3月23日 / 結論: 破棄差戻
インターネット上のウェブサイトに掲載された記事が,それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものではなく,会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取 引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示す るものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では,その記事を掲載…
事件番号: 平成21(受)609 / 裁判年月日: 平成22年4月13日 / 結論: その他
1 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者は,当該開示請求が同項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,その旨認識することができなかったことにつき重大…