訴えが、これが提起された時点において既に裁判所に係属していた別件の訴えと重複するものとして、不適法であるとされた事例
判旨
既に係属中の別件訴訟と、当事者および請求の趣旨・原因が同一である訴えを提起することは、民事訴訟法142条が禁ずる二重起訴に該当し、不適法として却下される。
問題の所在(論点)
先行する訴訟(別件訴訟)と、後から提起された本件訴えの一部が、民事訴訟法142条にいう「裁判所に係属する事件」と同一のもの(重複する訴え)に該当し、禁止されるか。
規範
民事訴訟法142条は、裁判所に係属する事件については、当事者は更に訴えを提起することができないと規定している。これは、被告の応訴の煩わしさ、裁判の不経済、および判決の抵触を防止する趣旨に基づく。同一の当事者間で、同一の請求について後訴を提起することは、同条に違反し不適法となる。
重要事実
被上告人らは、上告人に対し、平成23年の福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質による損害を受けたとして、平成25年に損害賠償を求める別件訴訟を新潟地方裁判所に提起した。その後、被上告人らは本件訴えを提起したが、本件のうち上告人に対する損害賠償請求に係る部分は、本件訴えの提起時点において既に別件訴訟が係属していたものである。
あてはめ
被上告人らが本件で求めている上告人に対する損害賠償請求は、別件訴訟と当事者、請求の趣旨、および請求の原因(本件事故による損害賠償請求)が重複している。本件訴えが提起された時点で、別件訴訟は既に裁判所に係属していたことが認められるため、本件のうち損害賠償請求に係る部分は別件訴訟と重複するものであるといえる。したがって、民訴法142条の禁止する二重起訴に該当し、訴えの利益を欠く不適法な訴えと解される。
結論
本件訴えのうち損害賠償請求に係る部分は二重起訴(民訴法142条)にあたり不適法である。したがって、原判決の当該部分を破棄し、第一審判決を取り消した上で、当該訴えを却下する。
実務上の射程
司法試験においては、同一の法的紛争について別個の訴えが提起された場合の処理として、民訴法142条を形式的に適用する際の典型例として参照される。原審が本案判決をした場合でも、上訴審が職権で調査し、訴えを却下すべきであるという手続的帰結を確認する上で有用である。
事件番号: 昭和34(オ)217 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同時履行の関係にある双務契約において、債務の履行場所について明黙の合意が認められる場合、その場所において履行の提供をなさなければ、相手方を履行遅滞に陥らせることはできない。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)は、山林の売買契約を締結し、売買残代金180万円を山林の所有権移転登記と引…