地方公共団体の職員が、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分の停職期間中に、上記暴行等の一部についての事情を知っていた同僚及び上記暴行の被害者の1人である部下に対して行った各働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の(1)、(2)など判示の事情の下においては、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 (1) 上記同僚に対する働き掛けは、同人の弱みを指摘した上で、上記の先行の処分に係る調査に当たって同人が当該職員に不利益となる行動をとっていたならば何らかの報復があることを示唆するものであった。 (2) 上記部下に対する働き掛けは、同人の弱みを指摘するなどした上で、上記の先行の処分に対する審査請求手続を有利に進めることを目的として同人との面会を求め、これを断った同人に対し、告訴をするなどの報復があることを示唆するものであった。
地方公共団体の職員が暴行等を理由とする懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例
地方公務員法29条1項3号、氷見市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和36年氷見市条例第16号)4条
判旨
公務員への懲戒処分が社会観念上著しく妥当を欠くか否かの判断において、停職期間中の非違行為が従前の非違行為と同質であり、反省の欠如や再発の危険性が認められる場合には、最長期間の停職処分も裁量権の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
懲戒権者が、停職期間中の追加の非違行為に対し、条例上の最長期間である停職処分を選択したことが、裁量権の逸脱・濫用(地方公務員法29条1項)にあたるか。
規範
公務員に対する懲戒処分は懲戒権者の裁量に委ねられており、その判断が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を逸脱・濫用したと認められる場合に限り違法となる。量定の妥当性は、非違行為の態様、動機、職務への影響、改善更生の可能性等を総合考慮して判断すべきである。
事件番号: 令和6(行ヒ)214 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動を理由として停職6月の懲戒処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の分…
重要事実
消防職員であるXは、上司・部下への暴行等を理由に停職2月の懲戒処分(第1処分)を受けた。しかし、Xはその停職期間中、第1処分の調査協力者や被害者に対し、彼らの弱みに付け込み、自分に有利な証言を強いるため、あるいは報復を示唆して威迫・困惑させる言動を繰り返した。これを受け、任命権者はXに対し、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行にあたるとして、条例上の最長期間である停職6月の懲戒処分(第2処分)を行った。原審は、第2処分は反社会的な違法行為とまではいえず、第1処分の期間を大きく上回る点は重きに失し裁量権を逸脱すると判断したため、市側が上告した。
あてはめ
まず、Xの行為は懲戒制度の適正な運用や審査請求の公正を害するもので、非難の程度が相当に高い。次に、これらの働き掛けは、従前の暴行等の延長線上にあり、第1処分の対象となった非違行為と同質性を有する。さらに、第1処分の期間中に行われたことは、Xの反省の欠如を強く推認させ、復職後の再発の危険性も否定できない。以上を総合すれば、第2処分が第1処分の期間を大きく上回り、かつ条例上の最長期間である6月を選択したとしても、社会通念上著しく妥当を欠くとはいえない。
結論
第2処分が裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとはいえず、適法である。原審の判断には法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
懲戒処分の量定の妥当性を検討する際、単に「前回の処分より重い」といった形式的な比較だけでなく、行為の質的な共通性や、処分中の犯行による反省の欠如、組織統制への悪影響を重視すべき実務上の指針となる。
事件番号: 平成29(行ヒ)320 / 裁判年月日: 平成30年11月6日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗においてその女性従業員の手を自らの下半身に接触させようとするなどのわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月の懲戒処分がされた場合において,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記処分に裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断には,懲戒権…
事件番号: 令和4(行ヒ)319 / 裁判年月日: 令和6年6月27日 / 結論: 破棄自判
飲酒運転等を理由とする懲戒免職処分を受けて地方公共団体の職員を退職した者が、大津市職員退職手当支給条例(昭和37年大津市条例第7号。令和元年大津市条例第25号による改正前のもの)11条1項1号の規定により一般の退職手当の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下においては、同処分が…
事件番号: 令和6(行ヒ)241 / 裁判年月日: 令和7年9月2日 / 結論: 破棄自判
地方公共団体の消防職員が部下に対する言動等を理由として懲戒免職処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 ⑴ 上記消防職員は、上記言動の当時、消防隊の小隊長…
事件番号: 平成31(行ヒ)97 / 裁判年月日: 令和2年7月6日 / 結論: 破棄自判
市立中学校の柔道部の顧問である教諭が,①部員間で生じた暴力行為を伴ういじめにより受傷した被害生徒に対し,受診に際して医師に自招事故による旨の虚偽の説明をするよう指示したこと,②加害生徒の大会への出場を禁止する旨の校長の職務命令に従わず同生徒を出場させたこと,及び③同部のために卒業生等から寄贈され校内に設置されていた物品…