1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反する。 2 国が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に対して国外に住所を有することをもって次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求める訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。 3 国会において在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことは、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、平成29年10月22日に施行された上記審査の当時において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける。 ⑴ 国会においては、平成10年、在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度を創設する法律案に関連して、在外国民に審査権の行使を認める制度についての質疑がされた。 ⑵ 平成17年、最高裁判所大法廷判決により在外国民に対する選挙権の制約に係る憲法適合性について判断が示され、これを受けて、同18年の法改正により在外国民に国政選挙の選挙権の行使を認める制度の対象が広げられ、同19年、在外国民に憲法改正についての国民の承認に係る投票の投票権の行使を認める法律も制定された。 ⑶ 在外国民に審査権の行使を認める制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの、その課題は運用上の技術的な困難にとどまり、これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難い。 (1、2につき、補足意見がある。)
1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことと憲法15条1項、79条2項、3項 2 国が在外国民に対して次回の最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えの適否 3 国会において在外国民に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとされた事例
(1~3につき) 憲法79条2項、憲法79条3項、憲法79条4項、最高裁判所裁判官国民審査法4条、最高裁判所裁判官国民審査法8条 (1、3につき) 憲法15条1項 (2につき) 行政事件訴訟法4条 (3につき) 国家賠償法1条1項
判旨
在外日本国民に最高裁判所裁判官国民審査の審査権行使を一切認めていない国民審査法は、憲法15条1項、79条2項、3項に違反し、かつ、国会が長期間にわたり立法措置を怠ったことは国家賠償法1条1項の適用上違法である。
問題の所在(論点)
在外国民に国民審査権の行使を認めない国民審査法の規定の合憲性、および在外審査制度を創設しない立法不作為が国家賠償法1条1項上の違法を構成するか。
事件番号: 平成13(行ツ)82 / 裁判年月日: 平成17年9月14日 / 結論: その他
1 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。 2 公職選挙法…
規範
審査権は選挙権と同様、国民主権の原理に基づく主権者の権能であり、その行使を制限するには「やむを得ない事由」が必要である。具体的には、制限なしには国民審査の公正を確保しつつ審査権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められない限り、当該制限は憲法に違反する。また、立法不作為による国家賠償請求については、憲法上の権利行使の機会を確保するための立法措置が必要不可欠かつ明白であるにもかかわらず、正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合に、例外的に違法性が認められる。
重要事実
国民審査法は、衆議院議員の選挙人名簿を流用し、告示後に氏名を印刷した投票用紙を調製・配布する方式を採用している。在外国民については、在外選挙制度が確立し国政選挙への投票が可能となっていたが、国民審査については技術的困難(期間の短さ等)を理由に、在外審査制度が全く創設されず、在外国民は平成29年の国民審査において投票できなかった。
あてはめ
審査権は選挙権と同様に重要であり、在外選挙制度が既に実運用されていることから、国民審査においても自書式投票の採用などにより技術的困難を回避する余地があったといえる。したがって、在外審査制度の創設が事実上不可能ないし著しく困難とは認められず、一切の行使を否定する現状には「やむを得ない事由」がないため憲法違反となる。立法不作為についても、平成17年の在外選挙権訴訟大法廷判決や国民投票法の制定等の契機があり、必要不可欠性が明白であったにもかかわらず、10年以上の長きにわたり立法措置を講じなかったことは、正当な理由のない長期の放置に該当し、国賠法上も違法である。
結論
在外国民に審査権行使を認めない現状は違憲であり、これに関する立法不作為は国家賠償法1条1項に基づき違法となる。
実務上の射程
選挙権・審査権などの参政権の制限に関する厳格な合憲性判定基準(やむを得ない事由)を確認した点、および立法不作為の国賠法上の違法性を肯定した数少ない事例として極めて重要である。答案上は、公法上の法律関係に関する確認の訴えの適法性(確認の利益)の議論においても参照できる。
事件番号: 令和5(受)1319 / 裁判年月日: 令和6年7月3日 / 結論: 棄却
1 優生保護法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項(3条1項1号、2号及び10条については、昭和23年9月11日から平成8年9月25日までの間、3条1項3号については、昭和23年9月11日から平成8年3月31日までの間、13条2項については、昭和27年5月27日から平成8年9月25日までの間において施行されて…
事件番号: 昭和24(オ)332 / 裁判年月日: 昭和27年2月20日 / 結論: 棄却
一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。 二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具…
事件番号: 昭和43(あ)1955 / 裁判年月日: 昭和44年3月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官でない者が、地方裁判所の第一審判決に対し最高裁判所へ跳躍上告をすることは、原判決における憲法判断または条例等の法律違反判断が不当であることを理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、地方裁判所が言い渡した第一審判決に対し、最高裁判所を上告裁判所とする跳躍上告を申し…