1 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。 2 公職選挙法附則8項の規定のうち,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。 3 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。 4 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民は,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録され ていることに基づいて投票をすることができる地位にある。 5 国会議員の立法行為又は立法不作為は,その立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受ける。 6 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使の機会を確保するためには,上記国民に上記選挙権の行使を認める制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,上記国民の国政選挙における投票を可能にするための法律案が廃案となった後,平成8年10月20日の衆議院議員総選挙の施行に至るまで10年以上の長きにわたって国会が上記投票を可能にするための立法措置を執らなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきであり,国は,上記選挙において投票をすることができなかったことにより精神的苦痛を被った上記国民に対し,慰謝料各5000円の支払義務を負う。 (1,2,4〜6につき,補足意見,反対意見がある。)
1 公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が在外国民の国政選挙における投票を平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時全く認めていなかったことと憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書 2 公職選挙法附則8項の規定のうち在外国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分と憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書 3 在外国民が次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えの適否 4 在外国民と次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において投票をすることができる地位 5 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合 6 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙までに国会が在外国民の国政選挙における投票を可能にするための立法措置を執らなかったことについて国家賠償請求が認容された事例
憲法15条1項,憲法15条3項,憲法41条,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法第4章の2 在外選挙人名簿,公職選挙法42条,公職選挙法49条の2,公職選挙法附則8項,公職選挙法(平成12年法律第62号による改正前のもの)21条1項,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)42条,住民基本台帳法15条1項,行政事件訴訟法4条,国家賠償法1条1項
事件番号: 令和2(行ツ)255 / 裁判年月日: 令和4年5月25日 / 結論: その他
1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)に最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査に係る審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反する。 2 国が在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない…
判旨
在外国民の国政選挙権を制限することは、選挙の公正確保のために制限がやむを得ないといえる特別の事情がない限り、憲法15条1項等に違反する。また、立法措置が必要不可欠かつ明白であるにもかかわらず、正当な理由なく長期にわたりこれを怠った場合は、国家賠償法1条1項上の違法となる。
問題の所在(論点)
1. 在外国民の選挙権行使を制限する公職選挙法の規定(本件改正前の全制限および改正後の限定措置)は、憲法15条、43条、44条等に違反するか。 2. 在外国民に選挙権行使の機会を保障しなかった立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法と評価されるか。
規範
1. 選挙権の制限は原則として許されず、制限なしには選挙の公正確保が事実上不能ないし著しく困難であると認められる等の「やむを得ない事由」がない限り、憲法15条1項・3項、43条1項、44条ただし書に違反する。 2. 国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項上違法となるのは、憲法上保障された権利行使の機会を確保するための立法措置が必要不可欠かつ明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合等の例外的な場合に限られる。
重要事実
本件改正前、在外国民は住民基本台帳に登録されないため選挙人名簿に登録されず、一切の投票ができなかった。平成10年改正(本件改正)により在外選挙制度が創設されたが、対象は比例代表選出議員の選挙に限定され、衆議院小選挙区および参議院選挙区の選挙権行使は認められなかった(附則8項)。在外国民である上告人らが、これら制限の違憲確認および立法不作為による国家賠償を求めて提訴した。
あてはめ
1. 在外選挙制度の構築には技術的課題があるとしても、内閣が昭和59年に解決可能として法案を提出しており、その後10年以上放置したことには「やむを得ない事由」がないため、旧法は違憲である。また、比例代表に限定した改正後も、通信手段の発達や非拘束名簿式の導入等の状況変化に照らせば、小選挙区等の制限を維持し続ける「やむを得ない事由」は認められず、附則8項も違憲である。 2. 選挙権確保のための立法措置が必要不可欠かつ明白であったにもかかわらず、10年以上の長きにわたり何ら措置を講じなかったことは、国会議員の職務上の義務に背く著しい不作為であり、国賠法上も例外的に違法といえる。過失も認められ、慰謝料(各5000円)が認められる。
結論
1. 在外国民が次回の国政選挙(小選挙区・選挙区)において投票し得る地位にあることを確認する。 2. 国は上告人らに対し、各5000円の損害賠償を支払え。
実務上の射程
選挙権等の極めて重要な基本的権利を侵害する立法不作為については、在宅投票制度(郵便投票)の制限に関する事案など、他の参政権制限の局面でも本判例の「やむを得ない事由」および「国賠法上の例外的な違法性」の枠組みが適用される。答案上、立法不作為の違法性については原則(通常は否定)と例外(明白かつ長期の放置)を明確に書き分ける必要がある。
事件番号: 平成8(オ)1342 / 裁判年月日: 平成10年3月13日 / 結論: 棄却
国会議員の被選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法一〇条一項と憲法一五条、市民的及び政治的権利に関する国際規約二五条に違反しない。
事件番号: 平成19(さ)1 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】在外日本国民の選挙権行使を認めていない公職選挙法の規定は、憲法15条1項、43条1項等に違反し、国会が正当な理由なく長期にわたりその立法措置を怠ったことは国家賠償法1条1項の適用上違法である。 第1 事案の概要:公職選挙法はかつて、日本国外に居住する国民(在外邦人)が国政選挙において投票することを…