一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。 二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具体的に表示せず、ただ事件名のみを記載しても、最高裁判所裁判官国民審査法施行令第二六条に反しない。
一 最高裁判所裁判官国民審査制度の趣旨 二 最高裁判所裁判官国民審査法の合憲性 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報に「関与した主要な裁判」として記載すべき内容
憲法79条1項,憲法79条4項,憲法15条,憲法19条,憲法21条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号)15条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号)32条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号),最高裁判所裁判官国民審査法施行令(昭和23年政令122号)26条
判旨
最高裁判所裁判官国民審査制度の本質は、任命を完成させる手続ではなく、不適当な裁判官を罷免する「解職」の制度であり、×印のない票を罷免を可としない票と扱う制度は合憲である。不適当と判断しない限り内閣の選定を信頼すべきという建前上、特定の裁判官のみ罷免を求める際に他を白票とする運用も、思想・良心の自由を侵害しない。
問題の所在(論点)
最高裁判所裁判官国民審査制度の本質(解職制度か任命補完制度か)及び、白票を罷免不可と扱う現行法の仕組みが、思想・良心の自由(憲法19条等)に抵触し違憲となるか。
規範
憲法79条2項・3項の国民審査制度は、一度完了した任命について、後に国民が罷免の是非を決定する「解職(リコール)」の制度である。本制度は、内閣による裁判官の選定(憲法6条・79条)を前提とし、特段の罷免理由がない限り国民が内閣の選定を信頼することを本旨とする。したがって、積極的に「罷免を可とする意思」を示さない投票(いわゆる白票)を、罷免を可としない数に算入する仕組みは、国民審査の合憲的な具体化として許容される。
事件番号: 昭和45(行ツ)118 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
一、憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任…
重要事実
上告人は、最高裁判所裁判官国民審査法が、罷免を可とする裁判官にのみ×印を付け、無記載の票(白票)を「罷免を可としない投票」として扱う点について、任命権の行使を強制し、思想・良心の自由を侵害する違憲なものであると主張して、国民審査の無効を訴えた。
あてはめ
国民審査は、任命から10年経過後も再度行われる点から、任命行為の完成手続ではなく解職制度である。解職制度においては「積極的に罷免を求める意思」があるか否かが基準となるため、罷免の要否が不明な者が「罷免を可とする者」に含まれないのは当然であり、これを罷免不可の側に算入しても、投票者の意思に反する効果は生じない。また、通常の選挙とは異なり、内閣が責任を持って選定した裁判官を、不適当な場合にのみ罷免する建前である以上、棄権を考慮せず内閣の選定を信頼して白票を投ずるよう求める仕組みは、国民審査制度の精神に合致する。したがって、特定の裁判官にだけ×印を付そうとする者が、他を白票として扱うことを強制されたとしても、不当な自由の侵害とはいえない。
結論
最高裁判所裁判官国民審査法は憲法に適合し、本件国民審査は有効である。
実務上の射程
国民審査制度の本質を「解職制度」と明確に定義したリーディングケースである。答案上は、国民審査の法的性質や、白票の扱いに関連する憲法15条・19条等の論点で、制度の趣旨(内閣の任命権への信頼と少数者による破壊の防止)を説明する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和46(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 棄却
憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任命に国…
事件番号: 昭和33(オ)100 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であり、罷免を可とするか否かを審査するものであるから、罷免を可としない場合に何も記入せず投票する形式(自書不要方式)は憲法に合致する。 第1 事案の概要:上告人は、国民審査において「罷免を可としない」場合に何も記入せず投票させる現行法(国民審査法等)の…
事件番号: 昭和39(行ツ)107 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
一 憲法第七九条第二項所定の国民審査につき、最高裁判所裁判官国民審査法が、これを解職投票としてその手続を規定したことは、右憲法の条項に違反するものではない。 二 (昭和二七年二月二〇日大法廷判決、民集六巻二号一二二頁参照) 三(補足意見がある)
事件番号: 平成30(行ツ)185 / 裁判年月日: 平成31年3月12日 / 結論: 棄却
最高裁判所裁判官国民審査法36条の審査無効訴訟において,審査人は,同法37条1項所定の審査無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている公職選挙法9条1項の規定の違憲を主張することができない。