判旨
最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であり、罷免を可とするか否かを審査するものであるから、罷免を可としない場合に何も記入せず投票する形式(自書不要方式)は憲法に合致する。
問題の所在(論点)
国民審査法が採用する、罷免を可としない場合に無記入で投票する方式は、憲法79条2項が予定する国民審査の趣旨に反し違憲ではないか。
規範
憲法79条2項の国民審査は、任命された裁判官の適否を審査決定する制度ではなく、一種の解職投票制度である。審査の対象は「罷免を可とする投票が多数を占めるか否か」にあり、審査人に求められるのは「罷免を可とする投票」か「罷免を可としない投票」かの二択である。後者を選択する際に何も記入しないこととする現行の方式は、この制度の本質に適うものである。
重要事実
上告人は、国民審査において「罷免を可としない」場合に何も記入せず投票させる現行法(国民審査法等)の仕組みが、憲法79条等の趣旨に反し無効であると主張して、審査の無効等を訴えた。原審がこれを合憲としたため、上告人が判例変更を求めて上告した事案である。
あてはめ
国民審査は任命の承認ではなく、一度行われた任命に対し、国民が解職を求めるか否かを選択する制度である。したがって、投票は「罷免の可否」に集約される。国民審査法29条等が、罷免を可とする場合にのみ「×」を記入させ、可としない場合には何らの記入を要しないとしたのは、解職投票という制度の性質を考慮した結果といえる。このような投票方式は、審査人の意思表示の方法として合理性があり、憲法の想定する審査の性質に合致すると解される。
結論
最高裁判所裁判官国民審査の現行方式は合憲である。上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(オ)332 / 裁判年月日: 昭和27年2月20日 / 結論: 棄却
一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。 二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具…
国民審査の法的性質が「解職投票」であることを確定させた重要判例である。参政権・選挙制度に関する論点において、制度の趣旨(性質)から具体的な手続(投票方式)の合理性を導く際の論理構成として有用である。
事件番号: 昭和46(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 棄却
憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任命に国…
事件番号: 昭和39(行ツ)107 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
一 憲法第七九条第二項所定の国民審査につき、最高裁判所裁判官国民審査法が、これを解職投票としてその手続を規定したことは、右憲法の条項に違反するものではない。 二 (昭和二七年二月二〇日大法廷判決、民集六巻二号一二二頁参照) 三(補足意見がある)
事件番号: 昭和45(行ツ)118 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
一、憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任…