一、憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任命に国民の意見を反映せしめるという趣旨が失われることにはならない。 二、最高裁判所裁判官の国民審査において、投票用紙に連記された裁判官の一部についてのみ、当該裁判官に対する記載欄に棄権の意思を表示し、あるいはその氏名を抹消する等して投票することにより、棄権することができるとする解釈は、最高裁判所裁判官国民審査法二二条一項に照らして採用しえない。
一、憲法七九条による国民審査の制度の趣旨 二、最高裁判所裁判官の国民審査において一部の裁判官についてのみ棄権する方法の有無
憲法79条,最高裁判所裁判官国民審査法15条,最高裁判所裁判官国民審査法22条
判旨
最高裁判所裁判官の国民審査制度は、その実質において解職の制度(リコール)である。罷免を可とする意思表示(×印)がない投票をすべて罷免を可としないものと扱うことや、連記された裁判官の一部についてのみ棄権できない仕組みは、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
国民審査制度が憲法79条の予定する「任命の審査」ではなく「解職制度」として運用されることの是非、および、白票を「罷免を可としない投票」として扱う等の審査方式が、憲法19条(思想・良心の自由)、21条(表現の自由)等に照らして合憲か。
規範
憲法79条の国民審査制度は、任命後に国民が解職の可否を判断する解職制度としての実質を持つ。この制度は、任命後の審査を通じて間接的に任命に国民の意思を反映させる趣旨を含む。したがって、罷免を可とする積極的な意思表示(×印)以外の投票(白票等)をすべて「罷免を可としない」ものと取り扱うことや、連記された一部の裁判官についてのみの棄権を認めない仕組みも、国民の自由な意思決定を不当に制約するものではなく、憲法19条、21条、79条に反しない。
事件番号: 昭和46(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 棄却
憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任命に国…
重要事実
上告人らは、最高裁判所裁判官の国民審査において、(1)審査が任命自体の審査ではなく解職制度として運用されている点、(2)衆議院議員選挙の投票所と入口・出口が同一で審査への参加が事実上強制されている点、(3)投票用紙に連記された裁判官の一部についてのみ棄権することが認められない点等が、身体の自由、表現の自由、良心の自由を侵害し憲法に違反すると主張して、審査の無効を訴えた。
あてはめ
まず、国民審査は任命後の解職の可否という形式をとるが、これを通じて任命に国民の意思を反映させる実質を備えている。次に、事実関係として、投票所において審査の投票をしないまま退場することを妨げる強制措置や、受領・投入の強制は認められないため、身体や表現の自由の侵害はない。さらに、一部の裁判官についてのみ×印を付し、他を白票(罷免を可としない)として投ぜざるを得ないとしても、それは国民に保障された自由の範囲内における制度上の制約にすぎず、憲法上の権利を侵犯するものとはいえない。
結論
国民審査を解職制度と解し、×印以外の投票を罷免不成立として扱う現行の運用および審査方式は、憲法19条、21条、79条等に違反せず合憲である。
実務上の射程
国民審査制度の本質を「解職制度」と定義した重要判例である。答案上は、国民審査の法的性格を論じる際の準拠枠組みとして活用する。また、投票方式が憲法上の自由を侵害するかという文脈では、具体的強制の有無(身体の自由)や、制度趣旨に照らした制約の許容性という観点で引用すべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)107 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
一 憲法第七九条第二項所定の国民審査につき、最高裁判所裁判官国民審査法が、これを解職投票としてその手続を規定したことは、右憲法の条項に違反するものではない。 二 (昭和二七年二月二〇日大法廷判決、民集六巻二号一二二頁参照) 三(補足意見がある)
事件番号: 昭和24(オ)332 / 裁判年月日: 昭和27年2月20日 / 結論: 棄却
一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。 二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具…
事件番号: 昭和33(オ)100 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であり、罷免を可とするか否かを審査するものであるから、罷免を可としない場合に何も記入せず投票する形式(自書不要方式)は憲法に合致する。 第1 事案の概要:上告人は、国民審査において「罷免を可としない」場合に何も記入せず投票させる現行法(国民審査法等)の…
事件番号: 昭和42(行ツ)20 / 裁判年月日: 昭和42年4月15日 / 結論: 棄却
選挙人、候補者、選挙運動者等の選挙の取締りないし罰則違反の行為は、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定違反にあたらないものと解するのが相当である。