一 憲法第七九条第二項所定の国民審査につき、最高裁判所裁判官国民審査法が、これを解職投票としてその手続を規定したことは、右憲法の条項に違反するものではない。 二 (昭和二七年二月二〇日大法廷判決、民集六巻二号一二二頁参照) 三(補足意見がある)
最高裁判所裁判官国民審査法の合憲性
憲法79条,最高裁判所裁判官国民審査法15条,最高裁判所裁判官国民審査法22条,最高裁判所裁判官国民審査法32条,最高裁判所裁判官国民審査法35条
判旨
憲法79条2項が定める最高裁判所裁判官の国民審査は、任命行為の審査ではなく解職の制度と解するのが相当である。したがって、審査を解職投票として規定する最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
憲法79条2項所定の国民審査の本質は、任命行為の是非を審査しその失効を認める制度(任命審査)か、あるいは一度有効に成立した任命を国民の意思により解除させる制度(解職制度)か。これに伴い、解職投票の手続を定める国民審査法の合憲性が問題となった。
規範
憲法79条2項及び3項の国民審査は、司法裁判が国民の信託に由来するという民主主義の原理に基づき、国民が裁判官を適任か否か判断し、不適任な者を退けさせる「解職の制度」である。憲法78条による身分保障の例外として、国民の意思により直接罷免を決定する法的性質を有する。
重要事実
上告人は、現行の最高裁判所裁判官国民審査法が国民審査を「解職投票」として規定している点について、憲法79条2項は「任命行為の審査」を定めたものであると主張した。その上で、任命を否とする審査結果を解除条件とする任命行為の失効と解すべきであり、解職制度として運用されている現状の審査投票は無効であり、同法は憲法違反であると訴えた。
事件番号: 昭和46(行ツ)6 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 棄却
憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任命に国…
あてはめ
最高裁判所裁判官であっても、憲法78条による罷免事由の限定を受けるが、79条2項はこれとは別に国民による解職を認めた規定である。国民審査は、裁判官の任命後の実績等を踏まえ、国民が不適任と判断した者を罷免(解職)させるための手続である。同法が「罷免を可とする投票」が多数の場合に罷免すると規定しているのは、この解職制度の趣旨に合致しており、積極的な信任投票まで要求していないとしても憲法の趣旨に反しない。
結論
最高裁判所裁判官国民審査法は憲法79条に違反せず合憲である。国民審査は解職の制度であるとする先例(昭和27年大法廷判決)を変更する必要は認められない。
実務上の射程
最高裁判所裁判官の国民審査の法的性質を「解職制度」と確定させた重要な判決である。司法権の民主的コントロールのあり方を論ずる際の基礎となる。答案上は、憲法79条の文言(「任命は……国民の審査に付し」)から直ちに任命審査と解さず、実質的な解職制度として構成する際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和45(行ツ)118 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
一、憲法七九条による最高裁判所裁判官の任命に関する国民審査の制度は、その実質において、いわゆる解職の制度であるが、任命後最初に行なわれる国民審査においては、任命後の解職の可否いかんという形式のもとで、任命についての審査が行なわれるという実質をもち、右審査の制度を解職制度と解したからといつて、なんら最高裁判所の裁判官の任…
事件番号: 昭和33(オ)100 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所裁判官国民審査は、一種の解職投票制度であり、罷免を可とするか否かを審査するものであるから、罷免を可としない場合に何も記入せず投票する形式(自書不要方式)は憲法に合致する。 第1 事案の概要:上告人は、国民審査において「罷免を可としない」場合に何も記入せず投票させる現行法(国民審査法等)の…
事件番号: 昭和24(オ)332 / 裁判年月日: 昭和27年2月20日 / 結論: 棄却
一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。 二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。 三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具…
事件番号: 昭和27(オ)71 / 裁判年月日: 昭和27年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法に基づく投票の効力判定において、原審の判断に法令解釈の誤りや判例違反が認められない場合、上告審はこれを維持すべきである。 第1 事案の概要:投票の効力が争点となった事案において、原審が特定の投票を有効または無効と判断した。これに対し、上告人は原審の判断には法の解釈誤りがあり、また条理を無…