1 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、当該財産の価額を上記通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。 2 相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、次の⑴、⑵など判示の事情の下においては、租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。 ⑴ 当該不動産は、被相続人が購入資金を借り入れた上で購入したものであるところ、上記の購入及び借入れが行われなければ被相続人の相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、当該不動産の価額を上記通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になる。 ⑵ 被相続人及び共同相続人であるXらは、上記⑴の購入及び借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続においてXらの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて当該購入及び借入れを企画して実行した。
1 相続税の課税価格に算入される財産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない場合 2 相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないとされた事例
相続税法22条
判旨
相続税法22条の時価評価において、評価通達の定める方法による画一的な評価が実質的な租税負担の公平に反するというべき特段の事情がある場合には、鑑定評価額等の他の合理的な方法による評価が許容される。
問題の所在(論点)
相続税法22条に基づき、財産評価基本通達(評価通達)に従って評価した額が「時価」として申告された場合、課税当局が「評価通達6」を適用し、通達に基づかない鑑定評価額をもって更正処分を行うことが、法22条および租税平等原則に照らして許容されるか。
規範
1. 相続税法22条にいう「時価」とは、客観的な交換価値を指す。評価通達は時価の評価方法を定めた行政内部の定めにすぎず、鑑定評価額が客観的な交換価値を上回らない限り、通達評価額を上回る更正処分も同条には違反しない。 2. もっとも、租税法上の平等原則により、特定の納税者についてのみ通達以外の方法で評価することは、合理的な理由がない限り許されない。 3. 「合理的な理由」があるといえるのは、通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき特段の事情がある場合に限られる。
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…
重要事実
1. 被相続人Aは、90歳代で銀行から計10億円超を借り入れ、本件各不動産を計13億8700万円で購入した。 2. 本件購入・借入れにより、Aの相続人である上告人らの相続税課税価格は、通達評価額ベースでは基礎控除以下となり、相続税総額が0円となる計算であった。仮に本件購入・借入れがなければ課税価格は6億円を超えていた。 3. 被相続人と上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生する相続において相続税の負担を減免させることを知り、かつ期待して、あえてこれを企画・実行した。 4. 税務署長は、通達評価額(計約3.3億円)ではなく、鑑定評価額(計約12.7億円)に基づき更正処分を行った。
あてはめ
1. 本件各通達評価額と鑑定評価額の間には大きな乖離があるが、単なる乖離のみをもって「特段の事情」があるとはいえない。 2. しかし、本件では、本件購入・借入れを行わなければ6億円を超えていたはずの課税価格が、これを行うことで相続税額を0円にまで著しく軽減させている。また、納税者側は、相続税負担の減免を知り、かつ期待してあえてこれを企画・実行しており、租税負担の軽減を意図したといえる。 3. このような状況下で通達による画一的評価を維持することは、同様の行為をしない他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反する。したがって、特段の事情(合理的な理由)が認められる。
結論
本件各不動産の価額を評価通達によらず鑑定評価額に基づき評価したことは適法であり、本件各更正処分は妥当である。
実務上の射程
通達評価と時価の乖離(節税効果)のみならず、納税者の主観的な意図や、相続直前の極めて不自然な資産圧縮行為といった具体的経緯を総合考慮して、実質的公平を害するか否かを判断する枠組みを示した。租税回避的な事案における通達評価の否認を正当化する強力な武器となる一方、予測可能性の観点から「特段の事情」の認定は慎重になされるべきとされる。
事件番号: 昭和47(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 破棄差戻
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額…
事件番号: 平成28(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成29年2月28日 / 結論: 破棄差戻
私道の用に供されている宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は,私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず,当該宅地の位置関係,形状等や道路としての利用状況,これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし,当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か,また,その低下が…
事件番号: 昭和60(行ツ)125 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 破棄差戻
租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁…