相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額を債務の元本金額から差し引いた金額をもつて控除すべき債務の額と評価するのが相当である。
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務の評価方法
相続税法13条1項,相続税法14条1項,相続税法22条
判旨
相続税の課税価格から控除すべき債務の金額は、相続開始時の現況による客観的な消極的経済価値により評価すべきであり、利率が通常の利率より著しく低い金銭債務については、元本金額から弁済期までの利息差相当額の中間利息控除後の現在価値を差し引いて評価する。
問題の所在(論点)
相続税法13条1項に基づき控除すべき「債務の金額」は、弁済すべき金額が確定している金銭債務の場合、常にその元本金額となるのか。また、市場金利より著しく低利である場合の評価方法は如何なるものか。
規範
相続税法22条にいう「債務の金額」は、その時の「現況」により、客観的に評価した消極的経済価値を基礎とする。金銭債務であっても、弁済すべき金額が当然に控除額となるのではなく、利率や弁済期等の現況によって個別的に評価されるべきである。具体的には、約定利率が通常の利率より低い場合、相続人はその差額分の経済的利益を享受できるため、通常の利率による弁済期までの中間利息(複利)を控除した現在価値を元本から差し引いた金額をもって評価額とする。
重要事実
被相続人Dは、株式会社Eから1億2900万円を約定利率年1%で借り入れた。返済期間が51年残っている時点で相続が開始したが、当時の市場の通常利率は年8%であった。納税者は債務の元本全額を控除すべきと主張したが、課税当局は低利による経済的利益を考慮して評価減を行うべきとして更正処分等を行った。
事件番号: 令和2(行ヒ)283 / 裁判年月日: 令和4年4月19日 / 結論: 棄却
1 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、当該財産の価額を上記通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。 2 相続税の…
あてはめ
本件債務は、通常の利率(年8%)に対し約定利率(年1%)が著しく低いため、相続人は年7%相当の経済的利益を51年間にわたり留保できる。この経済的利益は消極的価値を減少させる要因であるため、年8%の複利により中間利息を控除した現在価値を算出する必要がある。原審が年7%で中間利息を控除したのは、経済的利益の運用可能性という観点を欠いており、通常の利率である年8%を用いるべきである。
結論
控除すべき債務の額は、元本金額から、通常の利率と約定利率の差額(年7%)について通常の利率(年8%)で複利計算した51年間の中間利息控除後の現在価値を差し引いた、1835万3365円となる。
実務上の射程
相続税法上の債務控除において、確定債務であっても額面通りに評価されるとは限らないことを示した。特に、親族間や関連会社間での無利息・低利融資がある場合に、債務の経済的価値を時価評価(現在価値への割り戻し)する実務上の根拠として重要である。
事件番号: 昭和57(行ツ)18 / 裁判年月日: 昭和61年12月5日 / 結論: 棄却
一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産は、右売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利である。 二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額は、売買契約による当該農…
事件番号: 平成17(行ヒ)91 / 裁判年月日: 平成19年1月23日 / 結論: その他
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収…
事件番号: 平成21(行ヒ)65 / 裁判年月日: 平成22年10月15日 / 結論: 棄却
被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構…
事件番号: 昭和60(行ツ)125 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 破棄差戻
租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁…