一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産は、右売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利である。 二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額は、売買契約による当該農地の取得価額相当額と評価すべきである。
一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産 二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額
相続税法2条1項,相続税法22条,民法896条
判旨
農地の売買契約締結後、引渡し前に買主が死亡した場合、相続税の課税財産は農地そのものではなく、当該契約に基づく所有権移転請求権等の債権的権利であり、その価額は実際の取得価額をもって評価すべきである。
問題の所在(論点)
農地の売買契約後、所有権移転前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産の性質、およびその評価方法が問題となる。
規範
相続税の課税対象は、被相続人の死亡時に有していた権利の実態に従って判断される。農地の売買契約が成立している場合、買主が有するのは農地の所有権移転請求権等の「債権的権利」であり、その時価が具体的な売買契約によって顕在化しているときは、当該取得価額(契約金額)を相続税法上の評価額とするのが相当である。これは農地自体の評価に関する「相続税財産評価基本通達」の適用範囲外である。
重要事実
被相続人は、生前に農地の売買契約を締結し、代金を支払うなどして買主の立場にあったが、農地法上の許可や所有権移転登記、現実の引渡しが完了する前に死亡した。この農地の相続に関し、相続税の課税対象を「農地そのもの」として通達に基づく評価(時価より低い評価)を行うべきか、それとも「売買契約に基づく債権的権利」として「実際の取得価額(約1,965万円)」で評価すべきかが争われた。
事件番号: 昭和47(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 破棄差戻
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額…
あてはめ
本件において、被相続人は売買契約に基づき売主に対して所有権移転請求権等の債権的権利を有していた。この権利の価値は、まさに締結された売買契約の代金相当額(1,965万1,470円)として具体的に顕在化している。納税者は、所得税法上の取扱いや財産評価基本通達による農地評価との不均衡を主張するが、所得税は課税時期の問題であり、通達は農地そのものを評価するための指標であって、本件のように債権的権利として時価が判明している場合には適用されない。したがって、実態に即して取得価額で評価することが正当である。
結論
課税財産は「債権的権利」であり、その評価額は売買契約による取得価額相当額となる。
実務上の射程
契約履行中の不動産(特に農地)の相続において、物件そのものの評価(通達評価)よりも高い「実額(契約額)」で課税される実務上の指針となる。不動産の所有権移転請求権という「債権」として構成し、契約額を時価とみなす論法は、他の売買途上の財産評価にも射程が及ぶ。
事件番号: 平成21(行ヒ)65 / 裁判年月日: 平成22年10月15日 / 結論: 棄却
被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構…
事件番号: 平成17(行ヒ)91 / 裁判年月日: 平成19年1月23日 / 結論: その他
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収…
事件番号: 令和2(行ヒ)283 / 裁判年月日: 令和4年4月19日 / 結論: 棄却
1 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、当該財産の価額を上記通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。 2 相続税の…
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…