被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収益開始日が定められないため上記仮換地に居住用建物を建築することが不可能な状況のまま,被相続人が死亡し,相続が開始したこと,(3)被相続人又は相続人が相続開始ないし相続税申告の時点において上記仮換地を居住の用に供する予定がなかったと認めるに足りる特段の事情もないことなど判示の事情の下では,租税特別措置法(平成11年法律第9号による改正前のもの)69条の3所定の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用がある。
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき租税特別措置法(平成11年法律第9号による改正前のもの)69条の3所定の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用があるとされた事例
租税特別措置法(平成11年法律第9号による改正前のもの)69条の3,土地区画整理法99条
判旨
租税特別措置法(平成11年改正前)69条の4第1項にいう「相続の開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地」とは、被相続人等が現に居住し、かつ、客観的にも将来にわたり居住の用に供される実態にあることを要する。建物の取壊しが予定され、相続開始直後には既に居住の実態を失うことが確実な場合には、同条の適用は認められない。
問題の所在(論点)
相続開始の直前に建物が取り壊され、居住の継続性が失われている場合、租税特別措置法69条の4第1項にいう「居住の用に供されていた宅地」として小規模宅地等の特例の適用を受けることができるか。
規範
租税特別措置法69条の4第1項(小規模宅地等の評価の特例)の適用要件である「相続の開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地」に該当するか否かは、単に相続開始の瞬間における一時的な居住実態の有無のみならず、その居住が継続性を有し、客観的にみて将来にわたり居住の用に供される実態にあったか否かによって判断すべきである。具体的には、建物の取壊しや用途変更が予定されていたか、及び相続開始後の利用状況等の事情を総合考慮して決する。
事件番号: 昭和61(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項にいう「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの」の譲渡は、当該家屋を所有者として居住の用に供していた者のする譲渡であることを要する。 (反対意見がある。)
重要事実
被相続人Aは、本件宅地上の旧建物に長年居住していた。しかし、Aは死亡の約1か月前、市から本件宅地が都市計画道路の予定地に指定されたことに伴い、旧建物の移転(取壊し)と補償に関する通知を受けた。これを受け、Aは同年12月14日に旧建物を解体し、同月21日に新建物の新築届を提出、翌1月5日には旧建物について滅失登記の申請がなされた。Aは同年1月20日に死亡したが、その時点では旧建物はすでに取り壊され、Aは一時的に他所に避難せざるを得ない状況にあり、本件宅地には居住の実態が失われていた。なお、相続人らも本件宅地を将来にわたって居住の用に供する予定はなかった。
あてはめ
本件についてみると、相続開始の直前において、旧建物は行政上の要請に基づく移転通知によって取り壊されることが確定しており、現に死亡の約1か月前には解体作業が完了していた。したがって、相続開始の瞬間において、本件宅地が将来にわたり居住の用に供されるべき実態にあったとは認められない。また、建物の滅失登記申請や新築届の状況をみても、被相続人本人が本件宅地を終の棲家として継続的に利用する蓋然性は喪失していたといえる。よって、一時的な避難や将来の居住予定がない以上、本件宅地は「被相続人の居住の用に供されていた」ものとは評価できない。
結論
本件宅地には租税特別措置法69条の4第1項の特例は適用されない。したがって、更正処分および過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
実務上の射程
本判決は、小規模宅地等の特例における「居住用」の意義について、物理的な現況だけでなく「居住の継続性・定着性」という客観的な実態を重視する枠組みを示した。建物の取壊しを伴う移転が確定している場合における適用の限界を画定した事例として、実務上重要である。
事件番号: 昭和57(行ツ)18 / 裁判年月日: 昭和61年12月5日 / 結論: 棄却
一 農地の売買契約締結後農業委員会の許可前に買主が死亡した場合における相続税の課税財産は、右売買契約に基づき買主たる被相続人が売主に対して取得した当該農地の所有権移転請求権等の債権的権利である。 二 農地の買主の死亡により相続人が取得した当該農地の所有権移転請求権等の相続税の課税財産としての価額は、売買契約による当該農…
事件番号: 平成21(行ヒ)65 / 裁判年月日: 平成22年10月15日 / 結論: 棄却
被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構…
事件番号: 昭和47(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和49年9月20日 / 結論: 破棄差戻
相続税の課税価格の算出上控除すべき弁済期未到来の金銭債務につき、通常の利率による利息の定めがあるときは、右債務の元本金額をそのまま控除すべき債務の額と評価するが、約定利率が通常の利率より低いときは、その利率差によつて相続人に留保される弁済期までの毎年の経済的利益について通常の利率による中間利息を控除して得られた現在価額…
事件番号: 令和2(行ヒ)103 / 裁判年月日: 令和3年6月24日 / 結論: 破棄自判
相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)55条に基づく申告の後にされた増額更正処分の取消訴訟において,個々の財産につき上記申告とは異なる価額を認定した上で,その結果算出される税額が上記申告に係る税額を下回るとの理由により当該処分のうち上記申告に係る税額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した場合…