租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項にいう「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの」の譲渡は、当該家屋を所有者として居住の用に供していた者のする譲渡であることを要する。 (反対意見がある。)
租税特別措置法(昭和五七年法律第八号による改正前のもの)三五条一項にいう「当該家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたもの」の譲渡の意義
租税特別措置法(昭和57年法律第8号による改正前のもの)35条1項
判旨
居住用財産の譲渡所得の特別控除を受けるためには、譲渡所得の帰属者である個人が、自ら所有者として当該家屋を居住の用に供していたことが必要である。かつて居住していた者が、居住しなくなった後に相続等で所有権を取得し、その後譲渡した場合には、当該控除は適用されない。
問題の所在(論点)
旧租税特別措置法35条1項後段に基づき、居住の用に供されなくなった家屋を譲渡した場合の特別控除を受けるために、譲渡所得の帰属者(譲渡人)が「所有者として」居住していたことが要件となるか。また、居住を止めた後に相続で所有権を得た場合にその要件を満たすか。
規範
租税特別措置法35条1項(旧法)が定める特別控除の特例は、居住用財産の譲渡という特殊な事情に伴う担税力の低さを考慮したものである。この趣旨に照らせば、現に居住している家屋の譲渡(前半部分)のみならず、居住しなくなった家屋の譲渡(後半部分)であっても、譲渡所得の帰属者が「所有者として」当該家屋を居住の用に供していたことを要件とする。したがって、居住しなくなった後に所有権を取得した場合は、取得原因が相続であっても、所有者として居住した事実がない以上、本特例の適用はない。
重要事実
上告人は、夫Dと共に夫所有の家屋に居住していたが、昭和53年4月に夫婦で他所へ転居した。その後、昭和54年5月に夫が死亡したため、相続により当該家屋の所有権を取得した。上告人は、昭和55年12月に本件家屋を売却し、租税特別措置法35条1項後段の適用(居住用財産の譲渡所得の特別控除)を求めて確定申告を行ったが、税務当局より否認されたため争われた。
事件番号: 平成17(行ヒ)91 / 裁判年月日: 平成19年1月23日 / 結論: その他
被相続人の居住の用に供されていたが土地区画整理事業における仮換地の指定に伴い相続開始の直前には更地となっていた土地につき,(1)仮換地の指定がされ上記土地及びその仮換地の使用収益が共に禁止されたことにより,被相続人が仮設住宅への転居及び上記土地上の居宅の取壊しを余儀なくされたこと,(2)その後,上記仮換地について使用収…
あてはめ
本件において、上告人が本件家屋に居住していた期間、その所有権を有していたのは夫Dであり、上告人は所有者ではなかった。上告人が家屋の所有権を取得したのは、転居により居住の用に供しなくなった後の相続時である。そうすると、上告人は「譲渡所得の帰属者(所有者)の立場において」本件家屋を居住の用に供していたとはいえない。相続によって被相続人の地位を包括承継したとしても、上告人自身が所有者として居住していた実績がない以上、社会通念上の居住用財産の譲渡と同視することはできない。
結論
上告人の本件譲渡について、租税特別措置法35条1項所定の特別控除を認めることはできない。
実務上の射程
所得税法上の「居住」の意義が、単なる事実上の所在だけでなく「所有者としての居住」を要することを明確にした射程を持つ。答案上は、租税公平主義や特例の趣旨から厳格解釈を導く際の根拠となる。ただし、現行法では相続財産の譲渡に関する別の特例が存在する場合があるため、適用条文の文言に注意して使い分ける必要がある。
事件番号: 昭和61(行ツ)115 / 裁判年月日: 平成4年7月14日 / 結論: 棄却
個人の居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、当該不動産の取得のために代金の全部又は一部の借入れをした場合における借入金の利子は、当該不動産の使用開始の日以前の期間に対応するものに限り、所得税法三八条一項にいう「資産の取得に要した金額」に含まれる。
事件番号: 平成20(行ヒ)419 / 裁判年月日: 平成22年3月30日 / 結論: 破棄差戻
1 県が施行する道路事業の用地として所有地を買い取られたことに伴い,県から同土地上に存する所有建物を移転することに対する補償金の支払を受けた個人が,当該建物を第三者に譲渡して上記土地外に曳行移転させた場合において,上記補償金のうちに上記曳行移転の費用に充てられた金額があるときは,当該金額について所得税法44条の適用を受…
事件番号: 昭和60(行ツ)125 / 裁判年月日: 昭和62年10月30日 / 結論: 破棄差戻
租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用による違法を考え得るのは、納税者間の平等公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合でなければならず、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たつては、少なくとも、税務官庁…