給与所得者が、自家用自動車を譲渡した場合において、当該自動車の全走行距離の約八パーセントを通勤のために使用しているにすぎないなど判示の事情の下においては、当該自動車は所得税法六九条二項にいう「生活に通常必要でない資産」に当たり、その譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を同人の給与所得の金額から控除することはできない。
給与所得者の自家用自動車の譲渡による損失の金額をその給与所得の金額から控除することができないとされた事例
所得税法62条1項,所得税法69条,所得税法施行令25条,所得税法施行令178条
判旨
生活に通常必要でない資産の譲渡により生じた損失については、他の所得との損益通算の対象とならないとした原審の判断を正当として是認した。
問題の所在(論点)
生活に通常必要でない資産(本件では自動車)の譲渡によって生じた損失を、所得税法上の損益通算の対象から除外することが、憲法14条1項や25条に違反しないか。
規範
所得税法上の譲渡所得の計算において、その資産が「生活に通常必要でない資産」に該当する場合、当該資産の譲渡によって生じた損失の金額は、他の所得金額との損益通算の対象とすることはできない。この取扱いは、租税政策上の合理的な区別に基づくものであり、憲法14条1項に違反しない(昭和60年3月27日大法廷判決参照)。
重要事実
上告人は、自己が所有していた自動車を譲渡した。当該自動車の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、損失が生じたため、上告人はこの損失を他の所得と損益通算することを主張したが、原審はこれを認めなかったため、憲法14条、25条違反等を理由に上告した。
あてはめ
本件の自動車について、原審は事実関係に基づき「生活に通常必要でない資産」に係る損失であると認定した。所得税法は、嗜好品や娯楽用資産等、生活に密接に関連しない資産の損失について、公金による補填(税負担の軽減)を認めない趣旨で損益通算を制限している。本件においても、原審が認定した事実関係の下では、当該損失を損益通算の対象外とした判断は正当であり、平等原則等に抵触する不合理な差別とはいえない。
結論
本件自動車の譲渡により生じた損失を損益通算の対象外とした判断は正当であり、憲法14条1項、25条にも違反しない。
実務上の射程
所得税法62条1項、法附則17条等の「生活に通常必要でない資産」の範囲に関する解釈、および同法33条、69条の損益通算の制限に関する憲法適合性を論じる際の根拠として用いる。実務上は、当該資産が主観的・客観的に見て生活必需品といえるかどうかの事実認定が重要となる。
事件番号: 昭和56(行ツ)160 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和五六年法律第一一号による改正前のもの)二条一項三四号及びこれが引用する限りでの同項三三号は、憲法一四条一項に違反しない。
事件番号: 平成23(行ヒ)104 / 裁判年月日: 平成24年1月16日 / 結論: その他
1 一時所得に係る支出が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に該当するためには,それが当該収入を得た個人において自ら負担して支出したものといえることを要する。 2 死亡保険金の受取人を法人とし,満期保険金の受取人を当該法人の代表者とする養老保険契約の保険料を当該法人が支払い,満期保険金を当該代表…
事件番号: 平成15(行ヒ)217 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 破棄差戻
1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかは,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである。 2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42…