所得税法二八条三項が憲法一四条に違反する旨の主張は、同項所定の給与所得控除額を超える必要経費の支出があつたのに同項の適用上右超過額の控除が認められないとされた場合においてのみ問題となりうるものであるところ、本件において、上告人は、単に、研究費の名目で支給された分はすべて研究費として支出したから所得がなかつた旨を主張するにとどまるから、所論違憲の主張は、その前提を欠く。
違憲の主張がその前提を欠くとして排斥された事例
裁判所法10条1号,所得税法28条3項
判旨
大学教授が大学から支給を受けた入学増収研究費、見学研究費、テスト手当、中元、歳暮等の収入は、給与所得に該当する。また、給与所得控除額を超える必要経費の支出があったと主張・立証されない限り、控除の可否に関する憲法判断の前提を欠く。
問題の所在(論点)
1. 大学教授が大学から受給した各種研究費や手当、贈答品が所得税法28条1項の「給与所得」に該当するか。 2. 給与所得控除を超える実額経費の控除を認めない所得税法の規定は、憲法14条等に違反するか。
規範
所得税法28条1項にいう給与所得とは、雇用契約等に基づき、勤務の対価として受ける給付を指す。また、給与所得控除(同条3項)を超える必要経費の控除を認めないことの違憲性が問題となるためには、納税者が給与所得控除額を上回る実額の必要経費を支出し、その超過額の控除を求めているという前提事実が必要となる。
重要事実
D大学の教授である上告人が、大学から「入学増収研究費」「見学研究費」「附属高校一斉テスト手当」および「中元・歳暮」の名目で金員を受給した。上告人は、研究費名目の支給分は実際に研究費用として支出したため実質的に所得はないと主張し、これらを給与所得として課税した処分の取り消しを求めて上告した。
あてはめ
1. 入学増収研究費やテスト手当、さらには中元・歳暮に至るまで、これらは大学での勤務に関連して大学から支給されたものであり、その性質は勤務の対価としての給与所得であると解される(原審の判断を是認)。 2. 上告人は「支給された分を研究費として支出した」と主張するのみで、具体的な支出額が所得税法28条3項所定の給与所得控除額を超えていたことを主張・立証していない。したがって、控除限度を超える部分を必要経費として控除すべきとの主張はその前提を欠く。
結論
各種研究費や手当等は給与所得に該当し、本件においては給与所得控除を超える経費支出の主張もないため、違憲性の判断を要さず、課税処分は適法である。
実務上の射程
給与所得の該非に関する典型的な判断を示すとともに、給与所得者の必要経費実額控除の可否(大島訴訟で本格議論される論点)について、主張立証の前提を欠く場合には裁判所は憲法判断に踏み込まないという訴訟上の規律を示している。
事件番号: 昭和56(行ツ)160 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和五六年法律第一一号による改正前のもの)二条一項三四号及びこれが引用する限りでの同項三三号は、憲法一四条一項に違反しない。
事件番号: 平成16(行ヒ)141 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和50(行ツ)123 / 裁判年月日: 昭和53年2月24日 / 結論: 破棄自判
一 賃料増額請求が争われた場合における増額分の賃料は、原則として、その債権の存在を認める裁判が確定した日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべきである。 二 賃料増額請求にかかる増額分の賃料の支払を命じた仮執行宣言付判決に基づき支払を受けた金員は、その受領の日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべき…