一 賃料増額請求が争われた場合における増額分の賃料は、原則として、その債権の存在を認める裁判が確定した日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべきである。 二 賃料増額請求にかかる増額分の賃料の支払を命じた仮執行宣言付判決に基づき支払を受けた金員は、その受領の日の属する年分の所得の計算上収入金額に算入されるべきである。
一 賃料増額請求が争われた場合における増額分の賃料と所得の計算 二 賃料増額請求にかかる増額分の賃料の支払を命じた仮執行宣言付判決に基づき支払を受けた金員と所得の計算
旧所得税法(昭和22年法律第27号)10条,借地法(昭和41年法律第93号による改正前のもの)12条,借家法(昭和41年法律第93号による改正前のもの)7条,民訴法196条,民訴法198条
判旨
賃料増額請求等の係争中に仮執行宣言付判決に基づき金員を受領した場合、当該金員が解除条件付の給付であっても、受領時に所得が実現したと解し、受領した年分の収入金額に算入すべきである。
問題の所在(論点)
権利の存否・額が確定していない係争中の債権について、仮執行宣言付判決に基づき給付を受けた場合、その受領時に所得税法上の「収入すべき金額」として所得が実現したといえるか(所得の帰属時期)。
規範
所得税法(旧法10条1項)は、権利が確定した時点で所得の実現を認める権利確定主義を採用する。原則として、増額賃料債権や契約解除後の損害賠償請求権は、裁判の確定時に権利が確定する。もっとも、徴税政策上の技術的見地および課税の公平から、権利が未確定であっても既に金員を収受し「所得の実現があったとみることができる状態」が生じたときは、その受領時の属する年分の収入とする。仮執行宣言に基づく給付は、上訴審での取消可能性(解除条件)を伴うが、受領者が自己の所有として自由に処分できる以上、受領時に所得が実現したとみるのが相当である。
重要事実
事件番号: 昭和43(行ツ)25 / 裁判年月日: 昭和46年11月9日 / 結論: 棄却
利息制限法による制限超過の利息・損害金は、その約定の履行期が到来しても、なお未収であるかぎり、旧所得税法(昭和二二年法律第二七号)一〇条一項にいう「収入すべき金額」に該当せず、課税の対象となるべき所得を構成しない。
納税者(被上告人)は、借主に対し賃料増額請求及び土地明渡等の訴訟を提起した。控訴審において、増額賃料の支払及び仮執行宣言付の損害金支払を命ずる判決が出された。借主は上告したが、納税者は上告審の係属中に仮執行宣言に基づき合計約1,670万円(本件各金員)を受領した。税務署長は、これを受領した各年分の収入金額として更正処分等を行ったが、納税者は権利が確定した判決確定時(昭和40年)の収入であると主張して争った。
あてはめ
本件各金員は、仮執行宣言付判決という執行力を付与された公的判断に基づき、有効に支払われたものである。納税者はこれを受領し、自己の所有として自由に処分できる状態にあったといえる。したがって、仮に将来の判決取消によって返還義務が生じる可能性(解除条件)があるとしても、受領の事実を捉えて所得の実現を認めるのが実務上適当である。なお、後に判決が取り消された場合には、更正の請求等により救済が可能であり、納税者に酷な結果とはならない。
結論
仮執行宣言に基づき金員を受領した時期の属する年分(昭和37年及び39年)の収入金額として算入すべきである。ただし、受領金のうち、賃料増額請求以前の「約定賃料」に充当された部分は、本来の支払期に権利が確定しているため、受領時の収入とはならない。
実務上の射程
権利確定主義の例外として「管理支配」の概念を事実上導入した判例。答案では、原則として権利確定主義を述べつつ、仮執行宣言や事実上の支払など「所得が実現したとみるに足りる経済的事実」がある場合に、例外的に受領時を帰属時期とする論理構成で用いる。
事件番号: 昭和39(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和40年9月24日 / 結論: 棄却
第三者の債務の担保に供された抵当不動産が競売に付せられ競落代金が納付された場合には、求償権が事実上取立不能であつても、譲渡所得は成立する。
事件番号: 平成9(行ツ)13 / 裁判年月日: 平成10年11月10日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法一四条に基づき同法三条の規定による土地の使用に関して適用される土地収用法七二条所定の使用する土地に対する補償金は、その銭全額を、その払渡しを受けた日…
事件番号: 昭和53(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和55年11月20日 / 結論: 棄却
一 省略 二 所得税法九六条ないし一〇一条の定める資産所得合算課税制度の合憲性を争う主張は、特定の法律における具体的な税額計算の定めに関する立法政策上の適不適を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものでない。