米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から親会社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で取得することができる権利(いわゆるストックオプション)を付与されてこれを行使し,権利行使時点における親会社の株価と所定の権利行使価格との差額に相当する経済的利益を得た場合において,上記権利は,親会社が同社及びその子会社の一定の執行役員及び主要な従業員に対する精勤の動機付けとすることなどを企図して設けた制度に基づき付与されたものであること,親会社は,上記代表取締役が勤務する子会社の発行済み株式の100%を有してその役員の人事権等の実権を握り,同代表取締役は親会社の統括の下に子会社の代表取締役としての職務を遂行していたものということができ,親会社は同代表取締役が上記のとおり職務を遂行しているからこそ上記権利を付与したものであること,上記制度に基づき付与された権利については,被付与者の生存中は,その者のみがこれを行使することができ,その権利を譲渡し,又は移転することはできないものとされていることなど判示の事情の下においては,同代表取締役が上記権利を行使して得た利益は,所得税法28条1項所定の給与所得に当たる。
米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が親会社である米国法人から付与されたいわゆるストックオプションを行使して得た利益が所得税法28条1項所定の給与所得に当たるとされた事例
所得税法28条1項,所得税法34条1項
判旨
親会社から付与されたストックオプションの権利行使益は、子会社での職務遂行に対する対価としての性質を有するため、所得税法上の給与所得に該当する。
問題の所在(論点)
親会社から子会社の役員に対して付与されたストックオプションの権利行使益が、所得税法28条1項の「給与所得」に該当するか、あるいは同法34条1項の「一時所得」に該当するか。
規範
所得税法28条1項の「給与所得」とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付される所得をいう。給与の支払者が直接の雇用主(勤務先)ではない場合であっても、支払者が実質的な人事権等の支配を通じて役員等の職務遂行を統括しており、当該給付が職務遂行に対する対価としての性質を有する経済的利益であると認められるときは、給与所得に該当する。
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
重要事実
D社の代表取締役である上告人は、D社の100%親会社である米国E社から、精勤の動機付け等を目的とするストックオプションを付与された。上告人が権利を行使して得た利益(本件権利行使益)について、上告人は「一時所得」として申告したが、税務署長は「給与所得」に当たるとして増額更正処分を行った。上告人は、利益の発生や額が株価動向や自身の権利行使時期の判断に左右されること等を理由に、給与所得性を否定して処分の取消しを求めた。
あてはめ
まず、本件権利行使益は、E社との付与契約に基づき株式を取得したことで生じたものであり、E社から与えられた給付である。次に、E社はD社の全株式を保有して人事権等の実権を握っており、上告人はE社の統括下で職務を遂行していたといえる。そして、本件制度が精勤の動機付けを目的とし、上告人がD社の職務を遂行しているからこそ付与された事実に鑑みれば、本件利益は職務遂行に対する対価としての性質を有する。株価や行使時期によって利益が左右されるとしても、給付としての性質は否定されない。したがって、本件利益は非独立的な労務の対価としての実態を備えている。
結論
本件権利行使益は、所得税法28条1項所定の給与所得に該当する。
実務上の射程
給与所得の該否が争われる事案(特に雇用主以外の第三者から利益を得る場合)において、支払者と受領者の実質的な指揮命令・支配関係、および給付と労務提供との対価関係を基礎づける事実を指摘する際のリーディングケースとなる。
事件番号: 平成12(行ツ)13 / 裁判年月日: 平成13年7月13日 / 結論: 破棄自判
りんご生産等の事業を営むことを目的とする民法上の組合の組合員がりんご生産作業の専従者として同作業に従事して労務費名目で金員の支払を受けた場合において,上記金員は作業時間を基礎として日給制でその金額が決定され原則として毎月所定の給料日に現金を手渡す方法で支払われ,専従者は同作業の管理者の指示に従って作業に従事し,その作業…
事件番号: 平成17(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成18年10月24日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…