納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係る課税上の取扱いに関しては,法令上特別の定めが置かれていないところ,課税庁においては,かつて,上記ストックオプションの権利行使益を一時所得として取り扱い,課税庁の職員が監修等をした公刊物でもその旨の見解が述べられていたこと,(2)課税庁においては,平成10年分の所得税の確定申告の時期以降,上記の課税上の取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったが,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したこと,(3)上記ストックオプションの権利行使益の所得区分に関する所得税法の解釈問題については,一時所得とする見解にも相応の論拠があったことなど判示の事情の下では,納税者が前記権利行使益を一時所得として申告し,同権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎とされていなかったことについて,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」がある。
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したことにつき国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例
国税通則法65条1項,国税通則法65条4項,所得税法28条1項,所得税法34条1項
判旨
ストックオプションの行使による利益は給与所得に該当する。また、通達の変更により課税取扱いが変更された場合であっても、納税者が従前の取扱いに従ったことのみでは、国税通則法65条4項にいう重加算税等の不適用事由である「正当な理由」には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 職務に関連して付与されたストックオプションの行使利益が、所得税法上の「給与所得」に該当するか。 2. 課税当局の取扱いが変更された場合において、納税者が従前の取扱いに依拠して申告したことに「正当な理由」(国税通則法65条4項)が認められるか。
規範
所得税法上の所得区分は、当該利益の性質に基づき客観的に決定されるべきものである。また、国税通則法65条4項(現65条4項)にいう「正当な理由」がある場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告等の制裁を課すことが不当または酷と目される場合を指す。行政庁の解釈(通達等)の変更は、それ自体が直ちに「正当な理由」を基礎付けるものではない。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
重要事実
外資系日本法人の代表取締役であったXは、米国の親会社から付与されたストックオプション(SO)を行使し、多額の利益を得た。当時の税務当局は、外資系企業のSO利益を「一時所得」として扱う実務運用を広く行っていた。しかし、平成10年に当局はこれを「給与所得」とする通達改正を行い、これに基づきXの申告漏れに対して更正処分および過少申告加算税の賦課決定を行った。Xは所得区分の誤りを争うとともに、当局の指導や従来の運用に従ったものであるから加算税の免除事由(正当な理由)があると主張した。
あてはめ
1. SO利益は、発行会社と受給者との間の雇用契約等に基づく役務提供の対価としての性質を有しており、雇用契約等に密接に関連して発生するものであるから、給与所得に該当する。 2. 加算税制度は客観的な申告義務違反を是正する行政上の制裁である。SO利益の所得区分を巡り、かつては一時所得とする取扱いが広く行われ、裁判例も分かれていた事実はあるが、所得区分の判断は法解釈の問題である。納税者が自己に有利な解釈を採用したことや、当局の通達変更の経緯を考慮しても、客観的に申告を怠ったことを正当化するまでの「責めに帰することのできない事情」があったとは認められない。
結論
1. 本件SO利益は給与所得に該当する。 2. 過少申告について国税通則法65条4項の「正当な理由」があるとはいえない。
実務上の射程
所得区分の客観的性質を重視する判断枠組みであり、実務上の混乱や通達の変更があっても「正当な理由」の認定は極めて厳格である。租税法上の加算税免除の主張において、通達の不知や誤解、あるいは通達の変更を理由とする抗弁を封じる強力な射程を持つ。
事件番号: 平成16(行ヒ)141 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
米国法人の子会社である日本法人の代表取締役が,親会社である米国法人から親会社の株式をあらかじめ定められた権利行使価格で取得することができる権利(いわゆるストックオプション)を付与されてこれを行使し,権利行使時点における親会社の株価と所定の権利行使価格との差額に相当する経済的利益を得た場合において,上記権利は,親会社が同…
事件番号: 平成17(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成18年10月24日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
事件番号: 平成24(行ヒ)408 / 裁判年月日: 平成27年6月12日 / 結論: その他
1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各…