1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に該当し,②それ以外の場合には,当該事業の内容にかかわらず,その出資が匿名組合員自身の事業として行われているため事業所得となる場合を除き,雑所得に該当する。 2 匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が,当該事業につき生じた損失のうち当該契約に基づく同人への損失の分配として計上された金額を不動産所得に係る損失に該当するものとして所得税の申告をしたところ,これに該当しないとして更正がされた場合において,匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配に係る所得区分に関する課税庁の公的見解が上記申告後の通達改正によって変更されたが,変更前の公的見解によれば上記の金額は不動産所得に係る損失に該当するとされるものであったなど判示の事情の下では,上記申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」がある。
1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が受ける利益の分配と所得区分の判断 2 匿名組合契約に基づき航空機のリース事業に出資をした匿名組合員が,当該契約に基づく損失の分配を不動産所得に係るものとして所得税の申告をしたことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例
(1,2につき) 商法535条 (1につき) 所得税法27条1項,所得税法35条1項,商法536条,商法539条 (2につき) 国税通則法65条4項,所得税法26条1項
判旨
匿名組合契約に基づく利益分配に係る所得区分、および通達の変更が「正当な理由」(国税通則法65条4項)に及ぼす影響についての判断。
問題の所在(論点)
1. 匿名組合契約に基づく利益分配が所得税法上の不動産所得に該当するか(所得区分の決定基準)。 2. 旧通達に従ってなされた申告に対し、通達変更を理由に過少申告加算税を課すことができるか(国税通則法65条4項の「正当な理由」の有無)。
規範
1. 匿名組合員が、重要な意思決定に関与するなどの権限を有し、実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位にある場合は、営業者の営む事業内容に従い所得区分を判断する。これに対し、その地位にない場合は、出資自体が事業として行われない限り、配当的性質を有するものとして雑所得に該当する。 2. 国税通則法65条4項の「正当な理由」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいう。長年継続した課税庁の公的見解(通達)が変更された場合、変更前の通達に従った申告には「正当な理由」が認められる。
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
重要事実
亡Aは、航空機リース事業を営む匿名組合に出資した。契約上、Aは事業の遂行に関与できず、意思決定権限もなかった。Aは、当時の通達(旧通達)に基づき、分配された損失を不動産所得(損益通算可)として申告した。その後、課税庁は通達を改正(新通達)し、原則雑所得(損益通算不可)とする公的見解を示し、Aに対し更正処分および過少申告加算税の賦課決定を行った。
あてはめ
1. 本件契約ではAに重要な意思決定権限はなく、営業者と共同して事業を営む地位にあったとはいえない。したがって、本件分配金は原則どおり雑所得に該当し、不動産所得として損益通算することはできない(更正処分は適法)。 2. 旧通達は原則として事業内容に従うとしていたが、新通達は原則雑所得とするものであり、課税庁の公的見解は変更されたといえる。Aが改正前に行った申告は、当時の公的見解に依拠したものであり、単なる法律解釈の誤りとはいえず、納税者の責めに帰すことができない客観的事情がある。よって、改正前の申告分については「正当な理由」がある。
結論
更正処分は適法であるが、通達改正前になされた平成15年分・16年分の申告にかかる過少申告加算税の賦課決定は、「正当な理由」があるため違法として取り消される。改正後の17年分は適法である。
実務上の射程
匿名組合スキームを利用した節税(損益通算)を否定する一方、課税庁側の解釈変更による遡及的な加算税制裁を制限した。答案作成上は、所得区分判断の「実質的共同経営者」基準と、加算税免除の「公的見解への依拠」という二段階の論述に有用である。
事件番号: 平成17(行ヒ)20 / 裁判年月日: 平成18年10月24日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
事件番号: 平成14(行ヒ)112 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 破棄差戻
昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計…
事件番号: 平成11(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成16年7月20日 / 結論: 破棄自判
法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして…