昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計算に当たり,上記各株式を発行会社の1株当たりの純資産価額を基に評価する場合において,発行会社の資産の時価と帳簿価額との評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除して計算した1株当たりの純資産価額による上記各株式の評価が,当時,一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致しており,著しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらすことがうかがわれないなど判示の事情の下では,発行会社が当時順調に営業を行っていたとしても,上記控除をして純資産価額を計算すべきである。
昭和62年の非上場株式の取引に係る個人の所得金額の計算に当たり同株式を1株当たりの純資産価額を基に評価する場合に資産の時価と帳簿価額との評価差額に対する法人税額等相当額を控除して純資産価額を計算すべきであるとされた事例
所得税法28条2項,所得税法33条3項,所得税法34条2項,所得税法36条1項,2項,所得税法59条1項,所得税法施行令(平成10年政令第104号による改正前のもの)84条1項,所得税法施行令169条
判旨
非上場株式の価額を純資産価額方式で評価する場合、会社が継続中であっても、評価差額に対する法人税額等相当額を控除して算定するのが相当である。これは個人が直接・間接に財産を所有する場合の評価の均衡を図るものであり、清算を前提とせずとも合理性を有するためである。
問題の所在(論点)
所得税法36条2項に基づく非上場株式の価額算定において、財産評価基本通達185に基づき「評価差額に対する法人税額等相当額」を控除すべきか。特に、営業継続中の会社についても同控除が認められるかが問われた。
規範
所得税基本通達23〜35共−9(4)ハにいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」の算定にあたっては、原則として財産評価基本通達の定める方式による。同通達185が定める「法人税額等相当額の控除」は、個人が財産を直接所有する場合と会社を通じて間接的に所有する場合との評価の均衡を図る目的があり、会社の清算を前提とするものではない。したがって、課税上の弊害がある等の特段の事情がない限り、営業継続中の会社であっても当該控除を認めるべきである。
事件番号: 平成17(行ヒ)96 / 裁判年月日: 平成18年11月16日 / 結論: その他
納税者が平成11年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,(1)外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションに係…
重要事実
非上場会社である上告会社の代表者A1らは、昭和62年、有利な発行価額で新株の割当てを受けたほか、関連会社Eの株式を譲り受けた。税務署長は、これらの新株引受けや株式譲受けによる利益(時価と払込・譲受価額との差額)を一時所得や給与所得と認定し、更正処分等を行った。原審は、営業継続中の会社については清算を前提とした法人税額等相当額の控除は不合理であるとして、控除を認めずに時価を算定し、処分を適法とした。
あてはめ
所得税基本通達の評価方法は抽象的であり、実務上定着している財産評価基本通達の手法を修正して用いることが混乱を防ぎ合理的である。法人税額等相当額の控除は、直接・間接所有の均衡を図るための評価手法であって、現実に解散されることを前提としていない。昭和62年当時の通達改正前において、営業継続中であることを理由に同控除を否定することは、納税者の予見可能性を奪うのみならず、取引通念にも反する。本件において、控除が著しく不合理な結果を生じさせるなどの課税上の弊害は認められない。
結論
営業活動を順調に行っている会社の株式であっても、法人税額等相当額を控除して算定した純資産価額を基礎とすべきであり、控除を否定した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
非上場株式の低額譲受等の事案において、客観的交換価値(時価)を算定する際の基準を示す。基本的には相続税評価額(財評通)をベースにしつつ、所得税・法人税特有の修正(土地の時価評価等)を加えた上で、法人税額等相当額の控除は維持するという実務上のスタンダードを確定させた。
事件番号: 平成14(行ヒ)147 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄自判
1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に…
事件番号: 平成30(行ヒ)422 / 裁判年月日: 令和2年3月24日 / 結論: 破棄差戻
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,当該株式の譲受人が財産評価基本通達においてその株主が取得した株式は配当還元価額によって評価するものとされている株主に該当することを理由として,配当還元価額によって評価した額であるとした原審の判断には,同項の解釈適用を誤った違法がある。 …
事件番号: 平成24(行ヒ)408 / 裁判年月日: 平成27年6月12日 / 結論: その他
1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各…
事件番号: 昭和34(オ)267 / 裁判年月日: 昭和35年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】納税者の帳簿が完備せず直接資料を欠く場合、後日の在庫高から過去の平均在庫高を推定して所得金額を算定する推計課税の方法も、合理的である限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和24年度の所得金額について税務署長(被上告人)から更正処分を受けた。上告人の帳簿は不完備であり、正確な所得を直接把握…