1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断されるべきである。 2 経営の破たんした住宅金融専門会社甲社の設立母体であるA銀行が閣議決定等で示された処理計画に沿って甲社に対する貸付債権を全額放棄した場合において,当時甲社の資産からの回収見込額が甲社の設立母体以外の金融機関の甲社に対する債権の合計額を下回っていたこと,甲銀行が,甲社の経営に深くかかわり,甲社の再建計画に責任を持って対応することを明確にしていた等の事情により,上記金融機関の一部から同金融機関が甲社に対して有する債権の元本損失部分についても責任を負うように求められていて,せいぜい甲銀行の上記債権を放棄する限度で損失を負担する旨を主張してそれ以上の責任を回避することしかできない情勢にあったことなど判示の事実関係の下では,上記債権相当額は,放棄の時点でその全額が回収不能であることが客観的に明らかになっており,法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として上記放棄の日の属する事業年度の損金の額に算入されるべきである。
1 金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入するための要件及びその要件該当性の判断 2 経営の破たんした住宅金融専門会社の設立母体である銀行が放棄した同社に対する貸付債権相当額が法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入されるべきであるとされた事例
法人税法22条3項3号
判旨
法人税法上の貸倒損失として損金算入するための「債権の全額回収不能」の判断は、債務者の資産状況等の事情のみならず、債権者側の事情や経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきである。本件では、母体行としての社会的責任や他の債権者との関係から、債権放棄が客観的に確実であった以上、損金算入が認められる。
問題の所在(論点)
法人税法22条3項3号の「損失の額」として貸倒損失を計上するための「債権の全額回収不能」の判断基準、および本件のように解除条件付の債権放棄がなされた場合に損金算入が認められるか。
規範
事件番号: 平成10(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: 破棄自判
会社がその代表者に代わって同人の借入金の利息を支払ったことにより,その経済的利益に相当する同人に対する給与等(賞与)の支払があったことになって会社に源泉徴収による所得税の納税義務が客観的に成立したが,実際にされた納税の告知は,会社が同人に上記利息相当額を無利息で貸し付け,この貸付けに係る得べかりし利息相当額の経済的利益…
法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として金銭債権の貸倒損失を損金算入するためには、債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならない。その判断にあたっては、債務者の資産状況や支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきによる経営的損失といった債権者側の事情、および経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断すべきである。
重要事実
銀行E(上告人の前身)は、住宅金融専門会社(住専)であるD社の母体行として、D社の経営に深く関与していた。バブル崩壊後、D社の財務状況が悪化し、政府による住専処理計画が策定された。その過程で、農協系金融機関が「完全母体行責任」を主張したのに対し、E銀は「貸出金全額放棄」を限度とする修正母体行責任を主張して対抗した。平成8年3月、E銀はD社に対し、営業譲渡等がなされないことを解除条件として本件債権を放棄する約定を締結し、同事業年度の損金に算入した。しかし、税務当局は、D社に一定の資産があり全額回収不能とはいえないこと、放棄に解除条件が付されており確定していないこと等を理由に更正処分等を行った。
あてはめ
E銀はD社の設立・経営に深く関わり、再建計画においても責任ある立場を公にしていた。農協系金融機関との関係では、債権放棄以上の責任を回避するために全額放棄を受け入れざるを得ない情勢にあり、社会通念上、他の債権者に対し債権額に応じた平等負担を主張することは不可能であった。また、当時の不動産市況に鑑みれば、住専処理計画における回収見込額が非母体金融機関の債権額を下回ることは明らかであり、E銀の債権が劣後的に全額回収不能となることは客観的に明らかであったといえる。この客観的事実は、形式的に解除条件付の放棄であったとしても左右されるものではない。
結論
本件債権相当額は当該事業年度の損金の額に算入されるべきであり、損金算入を否認した更正処分等は違法である。
実務上の射程
貸倒損失の「回収不能」を形式的な資産超過の有無だけでなく、債権者の経営的判断や信義則上の地位、社会的背景といった「債権者側の事情」を含めて実質的に判断する枠組みを示した。答案上は、法人税法22条3項の損金の要件(一般に公正妥当な会計慣行)を具体化する判断要素として活用する。
事件番号: 平成12(行ヒ)32 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 破棄自判
無限連鎖講を主宰していた個人が,その事業主体が法人でない社団で代表者の定めがあるものになったとして,同社団名義で法人税,法人事業税,法人県民税及び法人市民税の申告をした場合につき,外形的事実に着目する限りにおいては,その社団というものが,意思決定機関,業務執行機関,代表機関等の団体としての組織を備え,その意思決定を多数…
事件番号: 平成12(行ヒ)133 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: その他
映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,借入金及び組合員の出資金を原資として当該映画を購入する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権…
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…