無限連鎖講を主宰していた個人が,その事業主体が法人でない社団で代表者の定めがあるものになったとして,同社団名義で法人税,法人事業税,法人県民税及び法人市民税の申告をした場合につき,外形的事実に着目する限りにおいては,その社団というものが,意思決定機関,業務執行機関,代表機関等の団体としての組織を備え,その意思決定を多数決の原則で行い,定款の規定上は構成員の変更にかかわらず団体として存続するとされ,代表の方法,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているようにみえるという事情の下においては,課税庁が法人でない社団の要件を具備すると認定してしたこれらの税の増額更正は,仮にその認定に誤りがあるとしても,誤認であることが上記各更正の成立の当初から外形上,客観的に明白であるとはいえず,また,上記個人が,税務対策等の観点から上記のとおり社団化を図り,その社団の名において事業活動を展開し,上記申告に係る税の納付により高額の所得税の負担を免れたなど判示の事情の下においては,上記個人に上記各更正による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的な事情がある場合に該当せず,上記各更正は当然無効であるとはいえない。
法人でない社団の要件を具備すると認定してされた法人税等の更正が当然無効であるとはいえないとされた事例
行政事件訴訟法3条4項,国税通則法24条,国税通則法56条1項,法人税法(平成12年法律第14号による改正前のもの)4条1項,法人税法2条8号,法人税法3条,地方税法(昭和62年法律94号による改正前のもの)55条1項,地方税法(昭和62年法律94号による改正前のもの)321条の11第1項,地方税法(平成12年法律97号による改正前のもの)72条の39第1項,地方税法(平成15年法律第9号による改正前のもの)72条2項,地方税法17条,地方税法24条6項,地方税法294条8項
判旨
課税処分が当然無効とされるためには、瑕疵が重大かつ明白であることを要し、外形上団体としての組織を備え実態認定に合理的理由がある場合には、仮に認定に誤りがあっても明白とはいえない。また、自ら社団を装い納税を免れた者が、後にその実体欠如を理由に処分の無効を主張することは、徴税行政の安定に照らし、著しく不当と認められる特段の事情がない限り許されない。
問題の所在(論点)
本来個人に帰属すべき所得に対し、法人でない社団としてなされた法人税等の更正処分について、その主体の認定に誤りがある場合に、当該処分が当然無効となるか。
規範
課税処分の当然無効が認められるためには、当該処分に重大な瑕疵が存在するだけでなく、その瑕疵が処分成立の当初から外形上客観的に明白であることを要する。また、仮に課税要件の根幹に過誤がある場合であっても、徴税行政の安定と円滑な運営の要請を考慮し、不服申立期間の徒過による不可争的効果を否定して不利益を免れさせることが、客観的・合理的にみて著しく不当と認められる例外的な事情(公権力による権利救済の必要性が極めて高い場合等)がない限り、無効とは認められない。
事件番号: 平成10(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: 破棄自判
会社がその代表者に代わって同人の借入金の利息を支払ったことにより,その経済的利益に相当する同人に対する給与等(賞与)の支払があったことになって会社に源泉徴収による所得税の納税義務が客観的に成立したが,実際にされた納税の告知は,会社が同人に上記利息相当額を無利息で貸し付け,この貸付けに係る得べかりし利息相当額の経済的利益…
重要事実
無限連鎖講を主宰していたDは、所得税の税務対策として「法人でない社団(E)」の設立を企図した。Dは定款を作成し、会員総会や理事会を開催し、E名義で法人税等の申告・納税を行っていた。しかし実際には、Dが終身会長として独裁的に財産を処分しており、理事会等の運営も形式的であった。その後、Dの破産管財人らが、Eは実体を持たないDの個人事業の別称にすぎず、法人でない社団を名あて人とした各更正処分は無効であると主張して、既納金の還付を求めた。
あてはめ
まず、Eは定款、会員総会、理事会、代表者といった団体の外形を備えており、支部大会の開催やE名義の会計処理も行われていた。課税庁がこれらを信頼して「法人でない社団」と認定したことには合理的な理由があり、瑕疵が客観的に明白とはいえない。次に、Dは自ら税務対策として社団化を図り、長年E名義で事業を展開して高額な所得税負担を免れてきた。このような経緯に鑑みれば、不服申立期間を過ぎた後に自ら社団性を否定して処分の効力を争うことを認めるべき「著しく不当な例外的事情」も認められない。
結論
本件各更正処分に当然無効といえるほどの瑕疵はなく、有効である。したがって、還付請求は認められない。
実務上の射程
行政処分の無効事由(重大明白説)を租税処分の文脈で適用した重要判例である。特に「明白性」の判断において、課税庁の認定の合理性(外形的事実)を重視する点、および「例外的な事情」の判断において、納税者側の信義に反するような行動(租税回避の意図等)を考慮する点は、答案構成上の重要な視点となる。
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
事件番号: 平成12(行ヒ)133 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: その他
映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,借入金及び組合員の出資金を原資として当該映画を購入する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権…
事件番号: 平成14(行ヒ)147 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄自判
1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に…
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …