映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,借入金及び組合員の出資金を原資として当該映画を購入する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権限及び処分権限を失っていること,当該組合は当該映画の購入資金の約4分の3を占める借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあることなど判示の事情の下では,当該映画は,当該組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,当該組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらない。
映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が購入したとされる映画が同組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらないとされた事例
法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)2条24号,法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項,法人税法施行令(平成12年政令第145号による改正前のもの)13条7号
判旨
形式上、資産の所有権を取得していても、使用・収益・処分権限の大部分が他者に移転し、事業上の危険も負担していない場合には、当該資産は「事業の用に供している」減価償却資産に当たらない。
問題の所在(論点)
形式上は資産(映画)の売買契約を締結して所有権を取得しているが、その実質において使用収益権限を失っている場合、当該資産は法人税法上の「減価償却資産」に該当するか。
規範
法人税法上の減価償却資産(旧法31条1項)に該当するためには、単に形式的な所有権を有しているだけでなく、実質的に当該資産を自ら「事業の用に供している」必要がある。その判断においては、(1)当該資産に関する使用収益権限及び処分権限の所在、(2)資産の購入資金に係る返済の危険負担の有無、(3)事業収益に対する関心の程度、等を総合的に考慮し、当該資産が当該事業において収益を生む源泉となっているか否かで決すべきである。
事件番号: 平成18(行ヒ)234 / 裁判年月日: 平成20年9月16日 / 結論: 棄却
PHS(簡易型携帯電話)事業者が大量に保有し事業の用に供したエントランス回線利用権につき,それが1回線に係る権利一つを1単位として取引されており,1回線に係る権利一つでもって,上記事業においてその用途に応じた本来の機能を発揮し収益の獲得に寄与することができるなど判示の事実関係の下では,上記利用権は,1回線に係る権利をも…
重要事実
不動産業を営む上告人は、映画配給事業を行う「本件組合」に出資した。組合は銀行借入と出資金を原資に映画を購入したが、同時に配給会社Gとの間で、Gが編集・広告・著作権行使等の権利を独占的に有し、組合側からは契約解除もできない配給契約を締結した。組合の借入金返済額はGからの最低支払保証額と合致し、かつ銀行保証が付されていた。また、上告人は映画の題名等の具体的情報を知らされず、損金算入による税負担軽減を主目的としていた。
あてはめ
まず、本件組合は配給契約により、題名選択、編集、広告、著作権侵害対応等の主要な権限をGに委ねており、実質的に映画の使用収益・処分権限を失っている。次に、借入金の返済はGの支払保証と銀行保証により確保され、組合は実質的な危険を負担していない。さらに、上告人は映画の具体的情報を知らず、配給事業自体の収益に関心を抱いていなかった。以上から、本件映画は組合の事業において収益を生む源泉とはなっておらず、「事業の用に供している」とはいえない。
結論
本件映画は、法人税法上の減価償却資産に当たらない。したがって、これに係る減価償却費を損金の額に算入することは認められず、本件各更正処分等は適法である。
実務上の射程
レバレッジド・リース等の節税スキームにおいて、形式的な契約書面が整っていても、経済的実態において収益の源泉としての実体や危険負担を欠く場合には、租税回避目的の否認に繋がる重要な枠組みである。答案上は、法人税法22条3項等の損金該当性を論じる際、減価償却資産の「実質的帰属」や「事業共用性」の判断基準として引用すべきである。
事件番号: 平成12(行ヒ)32 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 破棄自判
無限連鎖講を主宰していた個人が,その事業主体が法人でない社団で代表者の定めがあるものになったとして,同社団名義で法人税,法人事業税,法人県民税及び法人市民税の申告をした場合につき,外形的事実に着目する限りにおいては,その社団というものが,意思決定機関,業務執行機関,代表機関等の団体としての組織を備え,その意思決定を多数…
事件番号: 平成14(行ヒ)147 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄自判
1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に…
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…