会社がその代表者に代わって同人の借入金の利息を支払ったことにより,その経済的利益に相当する同人に対する給与等(賞与)の支払があったことになって会社に源泉徴収による所得税の納税義務が客観的に成立したが,実際にされた納税の告知は,会社が同人に上記利息相当額を無利息で貸し付け,この貸付けに係る得べかりし利息相当額の経済的利益に相当する同人に対する給与等(役員報酬)の支払があったものとしてされたという場合につき,客観的に成立した納税義務及び自動的に確定していた税額の内容は会社に自明であったこと,強制調査に際して会社から要請があったため,上記賞与に当たる経済的利益のうち上記得べかりし利息相当額の限度で納税義務の履行を請求するものとして上記納税の告知がされたものであること,上記納税の告知により請求された金額は,納税義務が客観的に成立し自動的に確定していた税額に包含されるものであり,納税告知書に記載された所得の種類に食い違いがみられないことなど判示の事実関係の下においては,上記納税の告知は,適法である。
源泉徴収による所得税につき自動的に確定していた税額に包含される金額でされた納税の告知が適法とされた事例
所得税法28条1項,183条1項,国税通則法(平成9年法律第89号による改正前のもの)36条1項,国税通則法36条2項,国税通則法施行令(平成12年政令第307号による改正前のもの)43条,国税通則法施行規則(平成14年財務省令第20号による改正前のもの)5条1項,国税通則法施行規則(平成14年財務省令第20号による改正前のもの)別紙第2号書式
判旨
源泉徴収による所得税の納税告知は、課税庁が前提とした支払事実と客観的な支払事実が異なる場合であっても、所得の種類が同一であり、かつ客観的に成立・確定している税額の範囲内であれば、基本的事実関係の同一性を問わず、その限度で適法となる。
問題の所在(論点)
源泉所得税の納税告知において、課税庁が前提とした支払事実の法的性格や原因が客観的事実と異なる場合に、当該告知は違法となるか。納税告知の適法性判断における「事実の同一性」の要否が問題となる。
規範
源泉所得税の納税義務は、原因となる給与等の支払事実ごとに発生し、税額が自動的に確定する。納税告知の適法性は、(1)告知された金額が、客観的に成立し自動的に確定していた源泉所得税の金額に包含されるか、(2)告知書に記載された所得の種類に食い違いがないか、という基準で判断される。これらの要件を満たす場合、課税庁が前提とした事実と実際の支払事実が細部で異なっていても、一致する限度で告知は有効である。
事件番号: 平成12(行ヒ)32 / 裁判年月日: 平成16年7月13日 / 結論: 破棄自判
無限連鎖講を主宰していた個人が,その事業主体が法人でない社団で代表者の定めがあるものになったとして,同社団名義で法人税,法人事業税,法人県民税及び法人市民税の申告をした場合につき,外形的事実に着目する限りにおいては,その社団というものが,意思決定機関,業務執行機関,代表機関等の団体としての組織を備え,その意思決定を多数…
重要事実
会社(被上告人)の代表者である甲は、金融機関から2億6250万円を借り入れ、株式を購入した。会社は甲に代わって当該借入金の利息(本件支払利息)を支払った。課税庁(上告人)は、この利息支払を「会社が甲に無利息貸付けを行ったことによる利息相当額の利益供与(役員報酬)」と構成して納税告知を行った。しかし、事実は「会社による利息の肩代わり(賞与)」という経済的利益の供与であった。会社側は、課税庁が前提とした事実(貸付利息相当額の報酬)と実際の事実(肩代わりした支払利息そのものの賞与)が異なり、基本的事実関係の同一性がないため告知は違法であると主張した。
あてはめ
本件では、課税庁が「貸付金に対する利息相当額(役員報酬)」として告知した金額は、実際に行われた「支払利息の肩代わり(賞与)」という経済的利益の供与額の一部に包含されている。いずれも「給与所得」に属するものであり、所得の種類に食い違いはない。納税義務は支払利息の肩代わりが行われた時点で自動的に確定しており、その内容は会社にとって自明であった。したがって、課税庁が実質的に請求した金額が客観的に確定していた税額の範囲内にある以上、告知の前提事実に一部誤りがあっても、その額の限度で告知は適法と解される。
結論
納税告知は、客観的に確定している税額に包含される限度で適法である。原判決中、課税庁の請求額が客観的確定税額に包含される部分(平成元年11月分等)を破棄し、当該部分に係る納税義務者の請求を棄却する。
実務上の射程
源泉所得税の納税告知の性質が「確定した税額の履行請求」であることを強調し、更正処分等と比較して告知の有効範囲を広く認める判例である。答案上は、告知の前提事実と客観的事実に相違がある場面で、所得の種類が同一か、金額が範囲内かを検討し、告知の有効性を論じる際に用いる。
事件番号: 平成16(行ヒ)326 / 裁判年月日: 平成18年2月23日 / 結論: 破棄自判
我が国の銀行が,本来は外国法人が負担すべき外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税)について対価を得て引き受ける取引を行い,同取引に基づいて同銀行が負担した外国法人税が上記対価を上回るため,同取引自体によっては損失を生ずるが,上記外国法人税の負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税…
事件番号: 平成14(行ヒ)147 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄自判
1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に…
事件番号: 昭和62(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和63年3月31日 / 結論: 棄却
収税官吏が犯則嫌疑者に対し国税犯則取締法に基づく調査を行つた場合に、課税庁が右調査により収集された資料を右の者に対する課税処分及び青色申告承認の取消処分を行うために利用することは許される。
事件番号: 平成16(行ヒ)37 / 裁判年月日: 平成16年12月20日 / 結論: 棄却
事業者が,消費税法施行令(平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,消費税法30条7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかった場合は,同項にいう「事業者が当該課税期間の課税…