取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,当該株式の譲受人が財産評価基本通達においてその株主が取得した株式は配当還元価額によって評価するものとされている株主に該当することを理由として,配当還元価額によって評価した額であるとした原審の判断には,同項の解釈適用を誤った違法がある。 (補足意見がある。)
取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,配当還元価額によって評価した原審の判断に違法があるとされた事例
所得税法59条1項
判旨
所得税法59条1項2号の低額譲渡における「その時における価額」の算定に当たり、取引相場のない株式の評価で配当還元方式を適用できる少数株主に該当するか否かは、譲受人ではなく譲渡人の譲渡直前の議決権割合等により判定すべきである。
問題の所在(論点)
所得税法59条1項2号にいう「その時における価額」を算定する際、取引相場のない株式について例外的な評価方法である配当還元方式を適用できる「少数株主」に該当するか否かの判定基準(譲渡人基準か譲受人基準か)。
規範
所得税法59条1項は、資産の移転時に未実現の増加益を清算して課税する趣旨である。取引相場のない株式の価額算定において、配当還元方式の適用有無を分ける「少数株主」該当性の判定は、譲渡所得課税が譲渡人の増加益を対象とするものである以上、譲渡人の会社への支配力の程度(譲渡直前の議決権割合等)に応じて行われるべきである。相続税・贈与税の評価基準である評価通達を準用する場合であっても、譲渡所得の性質に即した読替えが必要となる。
重要事実
大会社の代表取締役であったBが、同族関係者ではない法人Cに対し、所有する自社株式(本件株式)を配当還元方式による評価額と同額(1株75円)で譲渡した。税務署長は、Bが譲渡直前に有していた議決権割合(同族関係者含め22.79%)に鑑みれば、Bは評価通達上の「少数株主」に該当せず、原則的評価法である類似業種比準方式(1株2505円)によるべきとして更正処分を行った。これに対し、納税者側は、評価通達の文言通り「取得者(譲受人C)」を基準に判定すべきであり、Cは少数株主に当たるため配当還元方式が適当であると主張した。
事件番号: 平成14(行ヒ)112 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: 破棄差戻
昭和62年に個人が非上場株式を低額で譲り受けたことによる給与所得に係る収入金額とすべき金額,同年に個人が法人に対し非上場株式を低額で譲渡したことによる譲渡所得に係る総収入金額に算入すべき金額及び同年に個人が有利な発行価額による非上場の新株を取得する権利を与えられたことによる一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額の各計…
あてはめ
譲渡所得課税の本質は、譲渡人の支配下で生じた資産の増加益を、譲渡という機会に清算することにある。評価通達が「取得者」を基準とするのは、取得者の支配力に着目する相続税等の性質によるものであるが、譲渡所得課税の場面では譲受人の支配力は譲渡人の増加益に影響しない。本件において、譲渡人Bは譲渡直前に22.79%の議決権を有しており、同族株主等の判定において支配力が乏しい少数株主とは評価できない。したがって、取得者Cが少数株主であることをもって配当還元方式を採用することは、所得税法59条1項の趣旨に反する。
結論
少数株主に該当するか否かは、譲渡人の譲渡直前の状況により判定すべきである。譲受人を基準として配当還元方式の適用を認めた原審の判断は、所得税法59条1項の解釈適用を誤った違法がある。
実務上の射程
所得税法59条1項の「価額」算定において、通達の文言を形式的に適用せず、所得税の課税趣旨(増加益の清算)から読替えを肯定した重要判例。答案では「時価」の意義や評価方法が問われた際、相続税評価額の流用限界を示す規範として活用する。
事件番号: 令和4(行ヒ)228 / 裁判年月日: 令和5年11月6日 / 結論: その他
1 内国法人に係る特定外国子会社等の事業年度の途中で当該特定外国子会社等の発行する優先出資証券が償還され、当該事業年度終了の時には、当該特定外国子会社等の発行済株式等が、当該内国法人が有し剰余金の配当等が予定されていない普通株式のみとなった場合において、当該特定外国子会社等の事業年度を当該優先出資証券の償還日の前日まで…
事件番号: 令和2(行ヒ)303 / 裁判年月日: 令和4年4月21日 / 結論: 棄却
1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。 2 …
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…
事件番号: 平成24(行ヒ)408 / 裁判年月日: 平成27年6月12日 / 結論: その他
1 匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,①当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各…