1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかは,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである。 2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項に基づき同区に対し決済金を支払った場合において,上記組合員が上記農地を転用目的で譲渡するためには同項の規定を受けて定められた同区の規程により上記決済金を支払わなければならなかったという事実関係の下では,上記決済金は,上記農地を転用目的で譲渡するか否かにかかわらず決済の時点で既に支払義務が発生していた賦課金等の未納入金に係るものを除き,上記農地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除されるべき所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たる。 3 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良施設の目的外使用に関する同区の規程に基づき同区に対し使用負担金を支払った場合において,上記使用負担金の支払により,転用された土地のために土地改良施設を将来にわたり使用することができることになり,上記農地の譲渡価額の増額がもたらされるものであるという事情の下では,上記使用負担金は,上記農地の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上控除されるべき所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たる。
1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかの判断基準 2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42条2項に基づき同区に支払った決済金が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるとされた事例 3 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良施設の目的外使用に関する同区の規程に基づき同区に支払った使用負担金が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるとされた事例
(1〜3につき)所得税法33条3項 (2につき)土地改良法42条2項
判旨
所得税法33条3項の「譲渡費用」とは、一般的・抽象的な必要性ではなく、現実に行われた譲渡を前提に客観的に見てその譲渡を実現するために必要であった費用を指す。農地の転用譲渡に際して支払われた土地改良区への決済金や施設使用負担金は、譲渡実現に不可欠、または譲渡価額の増額をもたらすものとして譲渡費用に当たる。
問題の所在(論点)
農地の転用譲渡に際して土地改良区に対して支払われた決済金および施設等使用負担金が、所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用(譲渡費用)」に該当するか。
事件番号: 平成13(行ヒ)276 / 裁判年月日: 平成17年2月1日 / 結論: 破棄自判
1 受贈者が贈与者から資産を取得するために要した付随費用の額は,受贈者が同資産を譲渡した場合に所得税法60条1項に基づいてされる譲渡所得の金額の計算において,同法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」に当たる。 2 ゴルフ会員権の受贈者が贈与を受けた際に支払った名義書換手数料の額は,受贈者が同会員権を譲渡した場合に…
規範
資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項の「譲渡費用」に当たるか否かは、一般的・抽象的に当該資産を譲渡するために必要か否かではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったか否かによって判断すべきである。
重要事実
組合員である上告人が、農地を宅地転用目的で売却する際、土地改良法42条2項及び土地改良区の規程に基づき、農地転用許可申請の前提として「決済金」(未払賦課金や将来の事業負担金等)および「施設等使用負担金」(協力金等)の計約113万円を支払った。上告人はこれを所得税法上の「譲渡費用」として控除したが、税務署長がこれを否定して更正処分等を行った。
あてはめ
本件売買契約は農地転用を停止条件としており、転用目的での譲渡を実現するためには土地改良法および改良区規程上の決済金の支払が不可欠であったといえるから、客観的に見て譲渡実現に必要な費用に当たる(ただし、転用の有無に関わらず発生していた既往の未納賦課金部分は除く)。また、施設等使用負担金については、その支払により転用後も施設を継続利用可能となることで当該土地の譲渡価額の増額をもたらしたといえるため、譲渡費用に該当すると評価される。
結論
本件決済金(既往の未納分を除く)および本件協力金等は、いずれも本件土地の譲渡費用に当たる。
実務上の射程
譲渡所得の計算において、譲渡に際して支出された費用が「直接」譲渡に必要であったかという狭い基準ではなく、特定の譲渡契約の内容に即して「客観的に見てその譲渡を実現するために必要であったか」という具体的・客観的な関連性で判断すべきことを示した。農地転用事案以外の譲渡費用性についても広く援用可能な基準である。
事件番号: 昭和47(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: 破棄差戻
(省略)
事件番号: 平成20(行ヒ)419 / 裁判年月日: 平成22年3月30日 / 結論: 破棄差戻
1 県が施行する道路事業の用地として所有地を買い取られたことに伴い,県から同土地上に存する所有建物を移転することに対する補償金の支払を受けた個人が,当該建物を第三者に譲渡して上記土地外に曳行移転させた場合において,上記補償金のうちに上記曳行移転の費用に充てられた金額があるときは,当該金額について所得税法44条の適用を受…
事件番号: 昭和35(オ)437 / 裁判年月日: 昭和36年10月13日 / 結論: 棄却
一 所得税法第九条第一項第八号にいう収入金額とは、譲渡資産の客観的な価額を指すものではなく、現実の収入金額を指すものと解すべきである。 二 譲渡資産上の抵当権を抹消するため、第三者の債務を弁済しても、その費用は、所得税法第一一条の四の雑損にあたらない。 三 譲渡資産上の抵当権を抹消するため、第三者の債務を弁済しても、そ…