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売買代金額の認定が経験則に違背するとされた事例
民訴法185条,民訴法394条
判旨
売買代金の一部が第三者への解決金として支払われたと仮装されている場合、金額の一致や支払状況等の間接事実から真実の所得帰属を推認すべきであり、経験則に反する事実認定は許されない。
問題の所在(論点)
実質課税の原則に関連し、第三者に支払われたとされる金員が、実質的には売主に対する売買代金(所得)として帰属するか否かの事実認定の在り方が問題となる。
規範
事実認定において、直接証拠が乏しい場合であっても、(1)支払金額の合理的な算出根拠の有無、(2)関連する他取引の金額との整合性、(3)支払現場への当事者の関与状況、(4)受領者の実在性といった間接事実を総合考慮し、経験則に照らして不自然な点がないか検討し、実質的な所得の帰属を判断すべきである。
重要事実
不動産売主である被上告人は、買主H社から支払われた代金3500万円の他に、H社が第三者Iに解決金名目で支払った1617万円がある。H社はIの身元確認もせず巨額を支払ったとされるが、この1617万円は被上告人がH社から代替地を購入した代金と同額であった。また、Iへの支払には被上告人が立ち会い、一部は被上告人宅で行われていた。さらにIは所在不明で実在が疑わしく、被上告人には親族を経由した譲渡を装うなど租税回避の意図が認められた。
事件番号: 昭和29(オ)557 / 裁判年月日: 昭和32年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通郵便による発送および還付の不存在という事実のみから、直ちに当該郵便物の到達を経験則上断定することはできない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し決定通知書を普通郵便で発送し、これが返送されなかった事実がある。また、被上告人の近隣に住む第三者Eに対しても同時期に同様の通知を発送しており、…
あてはめ
まず、H社がIの調査をせず端数のある巨額の解決金を支払うことは、通常の会社取引として極めて不自然である。次に、解決金の額が被上告人の代替地購入代金と1円単位で一致している点は、単なる偶然とは考え難く、相殺決済の仮装を強く疑わせる。さらに、不干渉を装いながら支払現場に立ち会う被上告人の言動や、Iの実在性の欠如、先行する譲渡偽装の事実は、本件支払が被上告人の所得を分散させるための仮装であることを推認させるに十分である。したがって、これらを偶然として退けた原審の認定は経験則に反する。
結論
第三者への支払は被上告人への売買代金の支払を仮装したものと推認され、当該金員は被上告人の所得に帰属する。原判決には経験則違背の違法があるため、破棄・差し戻すべきである。
実務上の射程
実質課税の原則(所得税法12条等)が問題となる事案において、形式的な受領名義人にとらわれず、金額の符合や当事者の不自然な行動といった「間接事実による推認」の論法として活用できる。特に、実在性の疑わしい人物を介した利益移転の不自然さを指摘する際の規範となる。
事件番号: 平成11(行ヒ)169 / 裁判年月日: 平成16年7月20日 / 結論: 破棄自判
法人税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)2条10号に規定する同族会社に当たる有限会社の代表者で出資持分の大半を有する社員が,同会社に対して3455億円を超える金員を無利息,無期限,無担保で貸し付けたことに所得税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)157条の規定を適用され,利息相当分の雑所得があるとして…
事件番号: 平成15(行ヒ)217 / 裁判年月日: 平成18年4月20日 / 結論: 破棄差戻
1 資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかは,現実に行われた資産の譲渡を前提として,客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである。 2 土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良法42…
事件番号: 平成16(行ヒ)86 / 裁判年月日: 平成18年4月25日 / 結論: その他
1 納税申告手続を委任された税理士が納税者に無断で隠ぺい,仮装行為をして過少申告をした場合において,納税者が同税理士を信頼して適正な申告を依頼し,納税資金を交付したにもかかわらず,同税理士が上記行為をして納税資金を着服したものであり,納税者において同税理士が隠ぺい,仮装行為を行うことを容易に予測し得たということはできず…
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…