農業所得金額を認定するにあたり所得標準率に基づく推計の方法によつたことが審理不尽または経験則違反にならないとされた事例。
判旨
課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。
問題の所在(論点)
所得金額の算出において、課税庁が採用した所得標準率を基礎として推計を行うことが、推計課税の手法として合理性を有し、適法といえるか。
規範
課税庁による所得金額の推計課税において、所得標準率を用いる手法は、その標準率の作成方法が合理的であり、当該事案の所得を推計する手段として客観的な蓋然性を有する限り、所得算出の手段として相当性を有するものと解される。
重要事実
上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の作付面積、薄莚(うすすだれ)の製造販売枚数・価格、畑の耕作面積、及び収入の帰属等について、原審の認定事実に疑義があるとし、当該標準率による推計は実態に即していないと主張して上告したものである。
あてはめ
本件において、被上告人が採用した所得標準率の作成方法は詳細に認定されており、そのプロセスに不合理な点は認められない。農業所得という性質上、実額の把握が困難な場合に、客観的に作成された標準率を適用することは、実態に近い所得を算定するための手段として相当である。上告人が主張する作付面積や販売価格等の事実認定に関する違法については、原審の証拠取捨選択の問題に過ぎず、推計の合理性を左右するものではないといえる。
結論
本件所得標準率による所得算出は相当であり、これに基づきなされた課税処分を是認した原判決に違法はない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
事件番号: 昭和38(オ)725 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
所得税法に所得推計の規定が置かれる以前においても、信頼しうる調査資料を欠くため所得の実額調査のできない場合に、適当な合理的な推計方法をもつて所得額を算定することは、同法の当然許容していたところと解すべきである。
実務上の射程
推計課税の合理性が争点となる事案(所得税法、法人税法等)において、課税庁側が採用した推計指標(所得標準率等)の合理性を肯定する際の根拠として活用できる。特に実額把握が困難な業種における推計の許容範囲を示す事例である。
事件番号: 昭和29(オ)64 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。 第1 事案の概要:上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入につい…
事件番号: 昭和38(オ)1455 / 裁判年月日: 昭和40年7月6日 / 結論: 棄却
国税局作成に係る商工庶業所得標準率表に掲げた当該年度の所得標準率を適用し、かつ右標準率作成につき考慮外に置かれた特別経費を控除して推計された事業所得金額は、右所得標準率の当該事業に対する適用が具体的に妥当しない事実の証明のないかぎり、一応右事業所得金額とするに足りる真実近似性を保有するものと推定するのを妨げない。
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…