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請求書中に「再調査」の文言がある等の事情のもとで税務署長に対する再調査請求をしたのではなく国税局長に対し直接審査請求をしたものと認めて審査請求を切下した処分が違法でないとされた事例。
判旨
不服申立書の標題に誤記があっても直ちに不適法とはならないが、納税者が再調査の請求ではなく審査請求を意図していることを明言している場合には、適法な前置手続を経たものとは認められない。
問題の所在(論点)
国税通則法上の不服申立前置主義が適用される事案において、標題を「審査請求書」とし、かつ上級庁への審査請求を意図する旨を言明して提出された不服申立書を、適法な「再調査の請求」と認めることができるか。また、これに基づき取消訴訟の提起が適法となるか。
規範
行政不服申立てにおいて、請求書の標題に誤記があったとしても、その記載内容や提出先等の客観的事状から合理的に判断して適法な申立てと解し得るのであれば、直ちに不適法となるものではない。しかし、処分庁に対し再調査の請求をすべき場面において、納税者が上級庁に対する審査請求を行う旨を明確に意図し、その旨を言明している場合には、当該申立てを適法な再調査請求と解することはできず、審査請求としても不適法となる。
重要事実
上告人は、国税に関する法律に基づき、本来であれば処分庁である税務署長に対して「再調査の請求」を行うべきところ、東京国税局長を宛先とする「審査請求書」を提出した。被上告人(税務署側)は補正通知書に「再調査請求」と記載したり、収支計算書の提出を命じたりする等の措置を講じたが、上告人はあくまで東京国税局長に対して審査請求を行うのであって、被上告人に対し再調査の請求をするものではない旨を言明していた。その後、東京国税局長は当該審査請求を不適法として却下し、これを受けて上告人は更正処分の取消訴訟を提起した。
あてはめ
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…
本件において、上告人が提出した書面に「再調査」という字句が一部用いられていたとしても、その標題は「審査請求書」であり、宛先も東京国税局長とされていた。さらに、上告人自身が「再調査の請求をするものではない」と明言していた事実に照らせば、当該申立てを被上告人に対する再調査請求と解することはできない。したがって、法が定める不服申立順序に反する不適法な審査請求であり、これを却下した裁決に違法はない。適法な審査請求を経たとはいえない以上、取消訴訟の前提手続を欠くことになる。
結論
本件不服申立ては適法な再調査の請求とは認められず、これを却下した裁決は結論において正当である。したがって、適法な審査請求を経るという取消訴訟の提起要件を満たさないため、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
不服申立書の記載の誤りに関する救済の限界を示した事例。教示の不備や行政側の誘導があったとしても、申立人が明確に誤った手続を固執する意思を示している場合には、行政庁側の職権による救済(読替え)には限界があることを示唆している。答案上は、不服申立前置の充足性を判断する際、表示の誤りの許容範囲と申立人の主観的意図の関係を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)835 / 裁判年月日: 昭和40年2月5日 / 結論: 棄却
所得税の確定申告書を提出すべき義務ある者が申告書を提出しなかつた場合においては、税務署長が、無申告による決定をなすべきであるのに、誤つて過少申告による更正処分をしても、右更生処分の取消を求める訴の利益は認められない。
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…
事件番号: 昭和34(オ)973 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 破棄差戻
一 所得金額更正に関する審査請求の却下決定があつた場合でも、右却下が違法である場合には、右更正処分の取消を求める訴は審査の決定を経たものとして適法である。 二 審査請求書に証拠書類の添付がなく、これに対し補正を求めたにかかわらず補正をしなかつたからといつて、審査請求を却下することは違法である。
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。