判旨
審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することはない。
問題の所在(論点)
1. 審査請求において加算税等のみを不服の対象とした場合、審査決定書に所得額等の記載があっても、所得額等の更正処分について審査請求を経たもの(審査請求の前置)と認められるか。2. 訴訟係属中になされた処分の内容を訂正する通知により、訴訟の対象が当然に拡大するか。
規範
行政処分に対する不服申立(審査請求)がなされた場合、その不服申立の対象範囲は、不服申立書や証拠等に基づき、不服申立人が現に何を争う意思であったかという客観的な申立ての内容によって決定される。審査決定書に申立ての対象外の事項(所得額等)が記載されていたとしても、その事実のみで不服申立の範囲が当然に拡張されるものではない。また、既になされた処分の計数上の誤謬を訂正する通知は、新たな処分を構成するものではなく、不服申立手続や訴訟の対象に影響を及ぼさない。
重要事実
上告人は、更正処分等に対し審査請求を行ったが、その内容は加算税及び追徴税についてのみ不服を申し立てるものであった。しかし、審査決定書には所得額及び所得税額に関する記載も含まれていた。その後、本訴係属中に税務当局は加算税額の計数上の誤りを訂正する通知を行った。上告人は、審査請求において所得金額等も争ったものとみなされるべきであり、かつ、訴訟係属中の訂正通知によって所得額等を含む全事項が訴訟の対象になると主張して上告した。
あてはめ
事実認定によれば、上告人は当初、加算税及び追徴税についてのみ審査請求を行い、所得額等を争う意思はなかったと認められる。審査決定書に所得額等の記載があることは、この認定を左右するものではない。したがって、所得額等の取消しを求める訴えについては、適法な審査請求を経たものとはいえない。また、本訴係属中になされた通知は、既になされた加算税額の計数上の誤謬を訂正したものに過ぎず、新たな所得額の決定を伴うものではない。よって、当該通知をもって所得額等に対する新たな訴訟の契機とすることはできない。
結論
上告人の審査請求は所得額等を対象としておらず、適法な前置手続を欠く。また、計数上の誤謬訂正通知は新たな処分ではないため、結論に影響しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
不服申立の範囲(前置手続の充足性)が争点となる事案において、申立人の主観的意図と客観的な申立内容を重視する判断枠組みとして活用できる。特に「審査決定書に記載があるからといって対象が広がるわけではない」という点は、行政庁側の応答内容よりも申立側の行為を基準にする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)312 / 裁判年月日: 昭和38年10月29日 / 結論: 破棄自判
戦時補償特別措置法第三一条による国税局長の審査決定は、覆審的に課税価格を決定する趣旨であつて、不利益変更禁止の規定がないから、税務署長の更正より多額に決定することも許される。
事件番号: 昭和33(オ)692 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する出訴期間の起算点は、原則として最初の処分または審査決定の告知があった時から進行し、法令上の根拠がない再審査請求によってその進行が阻止されることはない。また、当初の処分の一部を取り消す等の誤謬訂正決定がなされても、当初の処分から既に経過した出訴期間が改めて進行を開始することはない。 …
事件番号: 昭和34(オ)973 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 破棄差戻
一 所得金額更正に関する審査請求の却下決定があつた場合でも、右却下が違法である場合には、右更正処分の取消を求める訴は審査の決定を経たものとして適法である。 二 審査請求書に証拠書類の添付がなく、これに対し補正を求めたにかかわらず補正をしなかつたからといつて、審査請求を却下することは違法である。
事件番号: 昭和32(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
税務署長がした所得金額の更正の減額訂正は、所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正ではない。