判旨
行政処分に対する出訴期間の起算点は、原則として最初の処分または審査決定の告知があった時から進行し、法令上の根拠がない再審査請求によってその進行が阻止されることはない。また、当初の処分の一部を取り消す等の誤謬訂正決定がなされても、当初の処分から既に経過した出訴期間が改めて進行を開始することはない。
問題の所在(論点)
行政処分に対する出訴期間が進行している中で、法令に根拠のない不服申立てや、処分の内容を一部修正する「誤謬訂正決定」がなされた場合、出訴期間の起算点や進行にどのような影響を及ぼすか。
規範
1. 法令に定めのない不服申立手続(再審査請求等)を行ったとしても、適法な審査決定によって開始された出訴期間の進行を阻止する法的効力は認められない。2. 行政処分に誤謬訂正等の変更が加えられた場合であっても、それが当初の処分を全面的に解消して新たな処分をなす趣旨でない限り、当初の処分により既に徒過した出訴期間が復活したり、新たに進行を開始したりすることはない。
重要事実
上告人は、昭和24年度分の所得税更正決定に対し国税局長へ審査請求を行い、昭和25年7月13日付で審査決定を受けた(同月27日に到達)。当時の旧所得税法には「再審査請求」の制度は存在しなかったが、上告人はさらに再審査を請求した。その後、昭和27年11月6日に「誤謬訂正決定」として、当初の審査決定の一部を取り消す旨の通知を受けた。上告人は、この誤謬訂正決定を機に出訴したが、当初の審査決定から既に2年以上が経過していたため、出訴期間の徒過が問題となった。
あてはめ
本件では、旧所得税法上、国税局長の審査決定に対しては国税庁長官への訴願または裁判所への出訴のみが認められており、再審査請求の制度は存在しなかった。したがって、上告人が行った再審査請求には出訴期間の進行を阻止する効果はない。また、昭和27年の誤謬訂正決定は、当初の審査決定を全面的にやり直したものではなく、一部の誤りを訂正・取消したに過ぎない。このような一部変更は、一度完成した出訴期間の徒過を覆すものではなく、訂正された部分を除き、当初の処分自体の効力を争うための期間を再開させる理由にはならない。
結論
本件訴えは、最初の審査決定が到達した日から起算される6か月の出訴期間を大幅に徒過しており、不適法である。誤謬訂正決定のみを捉えて取消しを求めることも、既に争えない状態となった当初処分を実質的に争うものであり、訴えの利益を欠く。
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…
実務上の射程
行政事件訴訟法等における出訴期間の厳格性を確認する射程を有する。特に、行政庁による「教示」にない独自の不服申立てや、処分の同一性を維持したままの軽微な変更(一部取消し)が、既定の出訴期間に影響を与えないという実務上の規範を示す。処分後の事情変更や行政側の職権是正があった際の出訴可否を判断する際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和50(行ツ)93 / 裁判年月日: 昭和51年5月6日 / 結論: 破棄自判
課税処分に対する異議申立につき税務署長がした決定の取消を求める訴の出訴期間は、右課税処分に対する審査請求につき裁決があつた場合においても、異議申立についての決定があつたことを知つた日又は決定の日から起算すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)695 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
審査決定の通知書が審査の請求人に郵便をもつて配達された日は、所得税法(昭和三七年法律第六七号による改正前)第五一条第二項が出訴期間の起算日とする「審査の決定に係る通知を受けた日」にあたる。
事件番号: 昭和32(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
税務署長がした所得金額の更正の減額訂正は、所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正ではない。