税務署長がした所得金額の更正の減額訂正は、所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正ではない。
税務署長がした所得金額更正の減額訂正は所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正か。
所得税法(昭和24年法律76号による改正前)46条4項
判旨
行政処分に対する不服申立てや訴訟が許容されるのは、当該処分によって権利・利益を侵害される場合に限られる。当初の更正処分を減額する訂正は、納税者に不利益を課すものではないため、これに対する審査請求や訴訟の提起は認められない。
問題の所在(論点)
当初の更正処分を減額する「減額訂正」が、不服申立てや取消訴訟の対象となる行政処分(旧所得税法46条4項の更正)に該当し、訴えの利益が認められるか。
規範
行政処分に対して審査請求や訴訟提起が許容されるのは、当該処分によってその権利または利益を侵される場合(不利益を課される場合)に限られる。既に確定した税額等を減額する訂正は、納税者の負担を軽減するものであり、納税者の権利利益を侵害する処分には該当しない。
重要事実
上告人の昭和23年度分所得について、税務当局(被上告人)は昭和24年2月28日付で更正処分を行った。その後、昭和25年12月23日付で、当初の更正金額を減額する内容の訂正を行った。上告人は、この減額訂正が旧所得税法46条4項の「再更正」にあたるとして、審査請求および本件訴訟を提起した。
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…
あてはめ
本件昭和25年12月23日付の訂正は、先になされた更正金額を減額するものであり、新たな所得の脱漏を発見して税額を増額させるものではない。したがって、旧所得税法上の「再更正」には該当しない。上告人が不利益を受けたのは当初の増額更正によるものであり、その減額訂正によって権利利益が侵害されることはない。たとえ通知に更正処分の用紙が用いられていたとしても、実質的に不利益を生じさせない以上、訴訟の提起は許されない。
結論
減額訂正は上告人の権利利益を侵害する処分ではないため、これに対する不服申立てや訴えは不適法である。
実務上の射程
行政事件訴訟における「処分性」や「訴えの利益」の基本原則を示す。減額更正(減額更正の一部取消しを含む)については、当初処分のうち減額されずに残った部分のみが争訟の対象となり、減額されたこと自体を争うことはできないという実務上の運用を支える判例である。
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
事件番号: 昭和38(オ)835 / 裁判年月日: 昭和40年2月5日 / 結論: 棄却
所得税の確定申告書を提出すべき義務ある者が申告書を提出しなかつた場合においては、税務署長が、無申告による決定をなすべきであるのに、誤つて過少申告による更正処分をしても、右更生処分の取消を求める訴の利益は認められない。
事件番号: 昭和35(オ)49 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過…
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…