青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
理由附記の不備のため青色申告の更正が違法とされた事例。
法人税法(昭和37年4月法律67号による改正前)32条
判旨
青色申告に対する更正処分における理由附記は、納税者が帳簿を無視して更正されないことを保障する趣旨から、帳簿との関連において更正の具体的根拠を明記する必要があり、納税者が理由を推知できるか否かにかかわらず、具体的根拠を欠く理由は不備として違法となる。
問題の所在(論点)
青色申告に係る法人税の更正処分において、更正の理由として「売上計上洩」と金額のみを記載することが、旧法人税法32条(現行法人税法130条2項参照)が要求する理由附記として適法か。
規範
青色申告制度は納税者に帳簿備付・記帳義務を課す反面、帳簿を無視して更正されないことを保障する趣旨(信頼保護)を有する。したがって、更正の理由附記は、単に納税者に理由を示すだけでなく、処分の妥当公正を担保するため、帳簿との関連において、いかなる理由で更正したかの具体的根拠を明記することを要する。この要件は客観的なものであり、納税者がその理由を推知できたとしても、理由附記の不備は治癒されない。
重要事実
青色申告の承認を受けている法人である上告人は、昭和26年8月1日から昭和27年7月31日までの事業年度分について所得金額の確定申告を行った。これに対し、処分行政庁(被上告人)は更正処分を行ったが、更正通知書に記載された理由は「売上計上洩一九〇、五〇〇円」との記載のみであった。上告人は、この理由附記に不備があるとして処分の取り消しを求めた。
あてはめ
本件更正通知書には「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載されているに過ぎない。この記載だけでは、いかなる資料に基づき、どの取引が売上の計上漏れと認定されたのかといった具体的根拠が不明である。帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して処分の具体的根拠を明らかにしておらず、青色申告制度が保障する「帳簿との関連性」を欠いている。したがって、納税者がたとえ内容を推知できたとしても、法律が要求する理由附記の程度に達していないと評価される。
結論
本件更正処分の理由附記には極めて不備があり、法律の要求する理由附記を欠くため、本件更正処分は違法として取り消されるべきである。
実務上の射程
青色申告の理由附記の程度を画定したリーディングケースである。答案上は、理由附記の趣旨(争訟便宜・処分の慎重合理性)に加え、青色申告特有の「帳簿尊重」の観点から、単なる結論(売上漏れ等)の提示では足りず、帳簿のどの記載が、どの資料と対比して否認されたかという具体的根拠を要する旨を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…
事件番号: 昭和39(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和42年9月12日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和二二年法律第二七号で同二九年法律第五二号による改正前のもの)第四六条の二第二項により更正通知書に理由の附記を要するのは、青色申告書提出承認のあつた所得について更正処分のあつた場合に限られ、それ以外の部分に関する更正は、いわゆる白色申告に対する更正と同様に処理されれば足りるものと解すべきである。
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…