所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再調査決定処分には誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載されているに過ぎず、右再調査決定の通知書に附記された理由にも、更正を相当とする具体的根拠が明示されていない場合は、右いずれの記載も、法所定の附記理由としては不備であつて、更正処分、審査決定はその取消を免かれないものといわなければならない。
所得税青色申請書についてなされた更正処分並びに審査決定の附記理由が不備であるとされた事例。
所得税法(昭和37年法律67号による改正前のもの)45条,所得税法(昭和37年法律67号による改正前のもの)49条6項,行政事件訴訟特例法1条
判旨
青色申告に対する更正処分等における理由附記は、処分の具体的根拠を納税者が知り得る程度に記載される必要があり、単に調査差益率を適用した旨の記載のみでは不十分である。行政手続における理由附記の不備は、処分自体の取消事由となる。
問題の所在(論点)
所得税法(昭和37年改正前)45条2項および49条6項が定める理由附記の要件を満たすためには、どの程度の具体的な記載が必要か。また、具体的な根拠を欠く記載がなされた処分は違法となるか。
規範
行政処分に理由を附記すべき義務は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものである。特に青色申告に対する更正処分においては、帳簿の記載を無視して更正されないことを納税者に保証する趣旨から、帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して処分の具体的根拠を明らかにすることを要する。また、不服申立てに対する決定における理由附記は、請求人の不服事由に対する判断を明確にし、結論に到達した過程を明らかにしなければならない。
事件番号: 昭和36(オ)409 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 審査決定の通知書に「貴社の審査請求の趣旨、経営の状況、その他を勘案して審査しますと、芝税務署長の行つた青色申告届出承認の取消処分は誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載しただけでは、理由附記としては不備であつて、審査決定は違法として取り消すべきである。 二 原処分と原処分を維持した審査…
重要事実
所得税の青色申告の承認を受けた上告人が、所得金額を約31万円として確定申告した。これに対し税務署長は、理由として「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載した通知書をもって、所得金額を約44万円とする更正処分を行った。また、その後の審査決定の通知書においても、当初の更正処分が正当である旨を述べるにとどまり、具体的な算定根拠等は示されなかった。
あてはめ
本件更正処分の理由は、単に帳簿額が低調なため調査差益率を用いたと述べるにすぎず、いかなる勘定科目にどれほどの脱漏があり、その金額がいかなる根拠に基づくものか、また調査差益率がいかなる過程で算定されたかが不明である。これでは納税者が通知書の記載自体から処分の具体的根拠を知ることは不可能である。また、審査決定においても、先行する処分や再調査決定の理由と相まっても具体的根拠を明確にしているとは認められず、請求人の結論到達過程を明らかにしたとはいえない。
結論
本件更正処分および審査決定の理由附記は、いずれも法定の要件を満たさず違法である。したがって、原判決を破棄し、本件処分および審査決定を取り消すべきである。
実務上の射程
理由附記の程度は「処分の性質」と「規定の目的」に照らして判断される。本判決は、特に相手方の防御権保障の必要性が高い青色申告更正等において、理由附記の不備が独立の取消事由となることを示した重要な射程を持つ。現代の行政手続法14条に基づく理由提示の解釈においても、本判決の趣旨(恣意抑制・不服申立の便宜)が基本的な判断枠組みとして維持されている。
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
事件番号: 昭和47(行ツ)76 / 裁判年月日: 昭和49年6月11日 / 結論: 棄却
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条八項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。
事件番号: 昭和51(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和54年4月5日 / 結論: 棄却
一 省略 二 青色申告書に係る法人税の更正処分につき理由雑記の欠如及び推計によつたことの瑕疵がある場合においても、右処分後に青色申告書提出承認取消処分がされたときは、右瑕疵は治癒される。