法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、その更正の理由として、「土地評価減一、三〇八、五一二円。北九州市a区b町c丁目D商会木材株式会社より譲り受けた下関市d町eのf宅地六七・八九坪の譲り受け価額が時価に比し著しく低い価額であり、時価との差額は贈与を受けたものと認められるから評価減をなしたものとして益金に加算する。時価二、二四三、四一五円。譲り受け価額九三四、九〇三円。差引一、三〇八、五一二円。」と記載されているにすぎず、右時価がいかなる根拠、基準に基づいて算出されたものであるのかが示されていない場合には、理由附記として不備であつて、右更正処分は違法である。
法人税青色申告についてした更正処分が理由附記の不備のため違法とされた事例
旧法人税法(昭和22年法律第28号)32条
判旨
青色申告に対する更正処分において、帳簿書類の記載を否認して所得を加算する場合、更正通知書には、勘定科目や金額だけでなく、帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示して更正の根拠を具体的に明示しなければならない。
問題の所在(論点)
青色申告に係る法人税の更正処分において、更正の理由として単に土地の時価と譲受価額の差額を益金算入する旨を記載し、その時価の算定根拠や資料を具体的に示さないことは、旧法人税法32条(現行130条2項参照)の要求する理由附記として十分か。
規範
法人税法が青色申告の更正処分に理由附記を義務付ける趣旨は、処分庁の恣意を抑制し不服申立ての便宜を図るとともに、正当な帳簿記載が無視されないことを保障する点にある。したがって、帳簿書類の記載を否認して更正する場合の理由附記は、更正にかかる勘定科目・金額を示すのみならず、その更正の根拠を、当該帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示することによって具体的に明示することを要する。
重要事実
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
青色申告の承認を受けている上告会社は、土地の譲受価額を約93万円として確定申告を行った。これに対し処分庁は、当該価額が時価(約224万円)に比して著しく低額であり、差額(約131万円)は贈与を受けたものと認められるとして益金に算入する更正処分を行った。更正通知書には、対象物件、時価と譲受価額の各金額、およびその差額を評価減として加算する旨のみが記載されていた。
あてはめ
本件更正通知書の記載によれば、土地の時価と譲受価額の差額を贈与として益金加算するとの結論はうかがえる。しかし、更正の基礎となった「土地の時価」がいかなる根拠や基準に基づいて算出されたのかについては全く言及がない。これは、納税者の帳簿書類の記載内容以上に信憑力のある具体的資料を摘示して更正の根拠を明示したものとはいえず、更正処分庁の判断の慎重・合理性を担保し不服申立ての便宜を図るという法の趣旨に照らして不十分である。
結論
本件更正処分は法の要求する理由附記を欠く違法なものであり、取り消されるべきである。
実務上の射程
青色申告制度の根幹をなす理由附記の程度について「資料の摘示」まで踏み込んで要求した重要判例である。答案上では、単に「計算の過程」だけでなく「帳簿を覆すに足りる客観的・具体的な根拠(資料)」の有無を検討する際に引用する。理由附記の不備は処分の内容の当否にかかわらず、それ自体が処分の取消事由となる(手続的瑕疵の独立性)点にも留意が必要である。
事件番号: 昭和40(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和47年3月31日 / 結論: 棄却
法人税青色申告についてした再更正処分の通知書に、その理由として、「借地権計上洩金三三〇万円」等と記載されており、また、その再調査請求棄却決定の通知書に、その理由として「(株)B工業所並びに(株)Gはともに同族会社であり、資産の譲渡による行為計算は同族会社の行為計算否認に該当するとした当初の処分は相当であり、計算過程によ…
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…