甲の法人税青色申告について、乙に対する支払家賃の損金算入を否認してした更正の通知書に、更正の理由として、「乙に対する未払家賃は債務未確定のため」と記載されているだけで、右認定の資料の摘示が全くない場合には、右資料の摘示を欠く点において更正の理由附記として不備があり、右更正は違法である。
法人税青色申告についてした更正が理由附記の不備のため違法とされた事例
法人税法130条2項
判旨
青色申告に係る法人税の更正において、帳簿書類の記載を否認して損金算入を認めない場合、更正理由の附記としては、単に勘定科目や金額を示すだけでは足りず、その根拠を帳簿以上に信憑力のある資料を摘示して具体的に明示する必要がある。
問題の所在(論点)
青色申告法人に対する法人税の更正において、損金算入を否認する際の「理由の附記」として、課税庁の判断の結論や趣旨を示すだけで足りるか。また、その認定の根拠となる資料の摘示が必要か。
規範
更正理由の附記義務(法人税法130条2項)の趣旨は、青色申告制度の保障に基づき、更正庁の恣意抑制による判断の慎重・合理性を担保するとともに、納税者に不服申立ての便宜を与える点にある。したがって、帳簿記載を否認する場合、更正通知書には単に更正の科目・金額を示すだけでなく、その根拠を帳簿以上に信憑力のある資料の摘示によって具体的に明示することを要する。このことは、収益を過少として更正する場合か、費用・損失の存在を否認する場合かによって異ならない。
重要事実
青色申告法人である上告人は、訴外E社の負債整理に関連する支払利息や支払家賃を損金に計上した。これに対し課税当局は、(1)利息につき「E社の負債整理のためであり会社の損金と認められない」旨を記載し支払相手別金額を示したに留まる通知、および(2)家賃につき「債務未確定のため」とのみ記載した通知により更正処分を行った。これらの記載には、判断の基礎となった具体的資料(反面調査の結果等)の摘示が含まれていなかった。
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…
あてはめ
本件各通知の記載によれば、支払利息がなぜE社の負債整理のためのものといえるのか、またなぜ損金算入が許されないのかという具体的根拠が不明である。加えて、それらを認定するに至った資料の摘示も全くない。支払家賃についても、記載を善解すれば課税庁の判断趣旨(使用貸借であるとの認定等)を読み取れなくはないが、やはりその認定の根拠となった資料の摘示を欠いている。これでは、納税者が更正の妥当性を検討し、不服申立てを行うための具体的な根拠を知るには不十分といえる。
結論
本件更正通知の記載は、いずれも法の要求する理由の附記として不十分であり、当該更正処分(および過少申告加算税賦課決定)のうち理由附記不備に係る部分は違法として取り消されるべきである。
実務上の射程
青色申告の更正処分における理由附記の程度を画定した重要判例である。答案上は、行政手続法14条1項の理由提示義務の一般論と対比しつつ、青色申告制度の特質(帳簿尊重)からより高度な具体性と「資料の摘示」まで要求される点に留意して論述する。なお、実地調査に基づかない更正(推計課税等)でも同様の理が妥当する。
事件番号: 昭和40(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和47年3月31日 / 結論: 棄却
法人税青色申告についてした再更正処分の通知書に、その理由として、「借地権計上洩金三三〇万円」等と記載されており、また、その再調査請求棄却決定の通知書に、その理由として「(株)B工業所並びに(株)Gはともに同族会社であり、資産の譲渡による行為計算は同族会社の行為計算否認に該当するとした当初の処分は相当であり、計算過程によ…
事件番号: 昭和51(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和54年4月5日 / 結論: 棄却
一 省略 二 青色申告書に係る法人税の更正処分につき理由雑記の欠如及び推計によつたことの瑕疵がある場合においても、右処分後に青色申告書提出承認取消処分がされたときは、右瑕疵は治癒される。