青色申告書による法人税の申告について不動産の取得価額が申告額より低額であることを更正の理由としてした更正処分の取消訴訟において、課税庁は、当該処分の適否に関する攻撃防禦方法として、当該不動産の販売価額が申告額より多額であることを主張することができる。
青色申告書による法人税の申告についてした更正処分の取消訴訟において課税庁が更正の理由と異なる事実を主張することができるとされた事例
旧法人税法(昭和22年法律第28号)32条
判旨
青色申告に対する更正処分の取消訴訟において、処分庁が更正通知書に記載した理由とは異なる事実を処分の適法性を支える攻撃防御方法として追加主張することは、被処分者に格別の不利益を与えない限り許される。
問題の所在(論点)
青色申告に対する更正処分の取消訴訟において、処分庁が更正通知書に理由として附記した事実とは異なる新たな事実を、処分の適法性を支える攻撃防御方法として主張(理由の差替え・追加)することが許されるか。
規範
青色申告に係る更正処分における理由附記の制度趣旨は、処分庁の判断の慎重・合理性を担保し、処分の理由を被処分者に知らせて不服申立ての便宜を図る点にある。もっとも、取消訴訟の審理対象は処分の適法性一般(違法性)であり、理由附記に瑕疵がない限り、処分庁は更正通知書に記載した理由(事実)に拘束されず、処分の基礎となった所得金額の正当性を基礎付けるための新たな事実を追加主張することができる。ただし、これが被処分者に格別の不利益を与える場合は制限される余地がある。
重要事実
宅地分譲業者である上告人は、不動産を約7600万円で取得し7000万円で販売した(売却損発生)として青色申告を行った。これに対し処分庁(被上告人)は、取得価額を6000万円と認定し、その旨を理由に附記して更正処分を行った。その後の取消訴訟において、処分庁は「仮に取得価額が上告人主張通りだとしても、販売価額は9450万円であるから、更正処分による所得金額はなお正当である」との新たな主張を追加した。
あてはめ
本件において処分庁が追加した主張は、不動産の販売価額に関するものであり、更正処分の適否(所得金額が正当か否か)を判断するための攻撃防御方法にすぎない。このような追加主張を許したとしても、更正処分を争う被処分者(上告人)に対し、訴訟上の格別の不利益を与えるものとは認められない。したがって、理由附記制度の趣旨に照らしても、処分庁が当初の附記理由以外の事実を主張することは妨げられない。
結論
被上告人(処分庁)による追加主張の提出は許される。よって、原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
行政事件訴訟における「理由の差替え」の可否に関する重要判例である。青色申告の理由附記は処分の有効要件であるが、処分が有効であることを前提とした「訴訟段階での理由の差替え」は、争点や課税物件の同一性が保たれる限り、民事訴訟の原則通り広く認められる。答案では、理由附記の瑕疵の問題(形式的要件)と、本判例が扱う主張立証の範囲の問題(実体的適法性)を峻別して論じる必要がある。
事件番号: 昭和50(行ツ)84 / 裁判年月日: 昭和54年4月19日 / 結論: 破棄自判
甲の法人税青色申告について、乙に対する支払家賃の損金算入を否認してした更正の通知書に、更正の理由として、「乙に対する未払家賃は債務未確定のため」と記載されているだけで、右認定の資料の摘示が全くない場合には、右資料の摘示を欠く点において更正の理由附記として不備があり、右更正は違法である。
事件番号: 昭和43(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和47年12月5日 / 結論: 棄却
一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ一一五五万円」、「認定利息(代表者)計上もれ一万九八三九円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金三九万六八九〇円」、「営業譲渡補償金九〇五万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として…
事件番号: 昭和62(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和63年3月31日 / 結論: 棄却
収税官吏が犯則嫌疑者に対し国税犯則取締法に基づく調査を行つた場合に、課税庁が右調査により収集された資料を右の者に対する課税処分及び青色申告承認の取消処分を行うために利用することは許される。
事件番号: 昭和40(行ツ)5 / 裁判年月日: 昭和47年3月31日 / 結論: 棄却
法人税青色申告についてした再更正処分の通知書に、その理由として、「借地権計上洩金三三〇万円」等と記載されており、また、その再調査請求棄却決定の通知書に、その理由として「(株)B工業所並びに(株)Gはともに同族会社であり、資産の譲渡による行為計算は同族会社の行為計算否認に該当するとした当初の処分は相当であり、計算過程によ…