一 審査決定の通知書に「貴社の審査請求の趣旨、経営の状況、その他を勘案して審査しますと、芝税務署長の行つた青色申告届出承認の取消処分は誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載しただけでは、理由附記としては不備であつて、審査決定は違法として取り消すべきである。 二 原処分と原処分を維持した審査決定の取消を同時に求める訴において、原処分の取消請求を棄却すべき場合には、審査決定の理由附記に不備の違法があつても、審査決定を取り消すべきではない。
一 審査決定の理由附記が不備とされた事例 二 原処分と原処分を維持した審査決定との取消を同時に求める訴において原処分の取消請求を棄却すべき場合に審査決定の理由附記の不備を理由に審査決定を取り消すことの可否
法人税法35条5項(昭和37年4月法律67号による削除前)
判旨
行政不服審査の決定における理由附記の不備は、原則として決定の取消事由となるが、原処分の適法性が裁判上で確定している場合には、例外的に決定の取消しを求める訴えに利益が認められない。
問題の所在(論点)
行政上の不服審査決定における「理由の附記」として、どの程度の記載が求められるか。また、理由附記に不備がある場合、常に審査決定を取り消すべきか。
規範
法律が審査決定に理由を附記すべき旨を定めている趣旨は、決定機関の判断を慎重にさせ、恣意を抑制して公正を保障することにある。したがって、附記すべき理由としては、請求人の不服の事由に対応して、その結論に到達した過程を明らかにしなければならない。これに欠ける理由不備の決定は、原則として手続上の違法として取消しを免れない。
重要事実
上告人は、税務署長からなされた青色申告承認取消処分を不服として東京国税局長に審査請求を行ったが、棄却された。その決定通知書には「経営の状況、その他を勘案して審査しますと、処分の取消処分は誤りがないと認められます」とのみ記載されていた。上告人は、本件決定の理由附記の不備および原処分の違法を理由に、審査決定と原処分の取消しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和47(行ツ)76 / 裁判年月日: 昭和49年6月11日 / 結論: 棄却
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条八項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。
あてはめ
本件の決定理由は、単に諸般の事情を勘案したとするのみで、請求人の不服事由に対応した結論への過程が全く示されていない。これは理由として不備であると言わざるを得ず、相手方の知る権利を侵害する。しかし、本件では原処分自体の適法性が既に裁判により肯定されている。このような場合、改めて理由を付した決定をさせたとしても結論が覆る余地はなく、審査決定を取り消す実益(訴えの利益)を欠くというべきである。
結論
本件審査決定の理由附記には違法があるが、原処分の適法性が確定している以上、審査決定を取り消す意味がないため、取消請求は棄却される。
実務上の射程
行政手続法や行政不服審査法における理由附記の程度を検討する際のリーディングケースである。答案上は、まず手続的瑕疵(理由不備)の存在を肯定しつつ、訴訟経済や紛争解決の実効性の観点から取消しの必要性(訴えの利益)を制限する論理として活用できる。ただし、原処分と審査決定の両方を争っている特殊な事案である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…
事件番号: 昭和45(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和49年4月25日 / 結論: 棄却
一、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条入項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。 二、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項…
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。