旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条八項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。
旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書に附記すべき理由の程度
旧法人税法(昭和22年法律第28号)25条8項,旧法人税法(昭和22年法律第28号)25条9項
判旨
青色申告承認取消処分における理由の付記は、処分の慎重・公正を担保し、相手方の不服申立てに便宜を与える趣旨から、記載自体から処分の根拠事実と法規を了知しうる程度であることを要する。根拠規定の号数を付記するだけでは不十分であり、具体的な取消事由となった事実を特定して摘示すべきである。
問題の所在(論点)
旧法人税法25条9項後段(現・法人税法127条2項)に基づく青色申告承認取消処分の通知における「基因となつた事実」の付記として、単に適用条文の号数を記載するだけで足りるか。理由の付記として要求される程度が問題となる。
規範
行政処分に理由の付記を要求する法の趣旨は、処分庁の判断の慎重・公正を担保して恣意を抑制するとともに、理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える点にある。したがって、附記の内容・程度は、特段の事情がない限り、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたかを、記載自体から了知しうるものでなければならない。単に抽象的に根拠規定を示すだけでは、特段の例外を除き不十分である。
重要事実
上告人(処分庁)は、相手方の青色申告承認を取り消すに際し、通知書に旧法人税法25条8項3号(帳簿書類に真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合)に該当する旨のみを付記して処分を行った。これに対し、相手方は理由の付記が不十分であるとして、処分の違法を訴えた。
事件番号: 昭和45(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和49年4月25日 / 結論: 棄却
一、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条入項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。 二、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項…
あてはめ
青色申告の承認取消しは、欠損金繰越や推計課税禁止等の特典を剥奪する不利益処分である。同法8項3号の事由は極めて概括的であり、単に号数を掲げるだけでは、隠蔽・仮装の有無や対象取引等の具体的理由を了知することが不可能である。また、取消しの是非は処分庁の合理的裁量に委ねられているため、裁量行使の適否を争う手がかりとして、いかなる態様・程度の事実により処分がなされたかを知る必要がある。処分庁にとって具体的理由の通知はさほど困難な事務ではない一方、税務調査過程での口頭説明等があったとしても、最終的な処分庁の判断を確定的に知りうるとはいえない。
結論
本件通知書には具体的な基因事実の記載がなく、単に根拠規定の号数が付記されているにすぎないため、法の定める付記の要件を欠き、本件処分は違法である。
実務上の射程
行政手続法14条に基づく理由付記一般の解釈指針として極めて重要である。特に、不利益処分において「どの事実」が「どの要件」に該当したかの論理関係を相手方が了知できる必要があるという基準は、現在の実務・答案作成においても中核となる。申請拒否処分と比較して、不利益処分ではより厳格な理由付記が求められる傾向にある。
事件番号: 昭和36(オ)409 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 審査決定の通知書に「貴社の審査請求の趣旨、経営の状況、その他を勘案して審査しますと、芝税務署長の行つた青色申告届出承認の取消処分は誤りがないと認められますので、審査の請求には理由がありません」と記載しただけでは、理由附記としては不備であつて、審査決定は違法として取り消すべきである。 二 原処分と原処分を維持した審査…
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。