所得税法(昭和二二年法律第二七号で同二九年法律第五二号による改正前のもの)第四六条の二第二項により更正通知書に理由の附記を要するのは、青色申告書提出承認のあつた所得について更正処分のあつた場合に限られ、それ以外の部分に関する更正は、いわゆる白色申告に対する更正と同様に処理されれば足りるものと解すべきである。
青色申告者に対する更正処分につき更正通知書に理由の附記を必要とする場合
所得税法(昭和22年法律27号で同29年法律52号による改正前のもの)46条,所得税法(昭和22年法律27号で同29年法律52号による改正前のもの)46条の2
判旨
青色申告に対する更正の理由附記は、帳簿書類に基づき計算される青色申告承認所得の更正に限られ、それ以外の所得に関する更正には不要である。また、課税処分の取消訴訟において、課税庁は更正処分等で考慮されなかった事実を処分を正当とする理由として新たに主張できる。
問題の所在(論点)
1.青色申告者に対する更正処分のうち、青色申告承認所得以外の所得に関する更正において理由の附記が必要か。2.課税処分の取消訴訟において、課税庁は更正処分や審査決定で理由とされなかった新たな事実(増額事由)を、処分の正当性を維持するための反論として主張できるか。
規範
1.青色申告に対する更正の理由附記義務(旧所得税法46条の2第2項)は、帳簿書類に基づく実額調査を保障し、帳簿の記載を否定する具体的根拠を明確にする趣旨である。したがって、理由附記を要するのは、法定の帳簿書類に基づいて計上される「青色申告承認所得」の更正に限られる。2.課税処分の取消訴訟においては、処分により確定された税額が正当な税額を超えているか否かが審理の対象となる(総額主義)。そのため、被告である処分庁は、更正処分等の段階で考慮していなかった事実であっても、処分の正当性を基礎付ける理由(税額を維持する理由)として新たに主張することが可能である。
重要事実
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
上告人(納税者)は青色申告を行っていたが、事業所得以外の所得について更正処分を受けた。当該処分の通知書には理由の附記がなかったため、上告人は理由附記を欠く違法があると主張した。また、当該処分の取消訴訟において、被上告人(処分庁)は、当初の更正処分等で看過していた「扶養控除額の過大計上」という不実申告の事実を新たに主張し、源泉徴収税額の認定誤りを考慮しても、正当な税額は更正処分の税額を上回るため処分は適法であると反論した。
あてはめ
1.本件更正は、青色申告承認を受けた事業所得の計算に関するものではなく、それ以外の部分に関するものである。したがって、帳簿書類の信頼性を前提とする理由附記制度の趣旨は及ばず、白色申告と同様に理由附記を欠いても違法ではない。2.処分庁が主張する扶養控除の過大計上の事実は、それによって直ちに更正処分の額を増額変更するものではなく、現にある更正処分が「正当な税額を上回る重課ではない」ことを立証し、処分を維持するための主張にすぎない。このような主張に再更正の手続きは不要であり、訴訟の過程で新たに主張することは許される。
結論
1.事業所得等以外の所得に関する更正には理由附記を要しない。2.処分庁は訴訟において、処分の正当性を裏付けるために、当初の更正理由に含まれていなかった事実を主張できる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
1.理由附記の範囲について、青色申告特有の法的保障が及ぶ範囲(帳簿に基づく所得)を画定した。2.訴訟物については、処分の個別的な理由の適否ではなく、税額の客観的な正当性を争う「総額主義」を採ることを明確にした。答案上、理由の差し替えや追加主張の可否が問われる場面で、本判例を根拠に総額主義の観点から肯定する論理を展開できる。
事件番号: 昭和35(オ)49 / 裁判年月日: 昭和35年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過…
事件番号: 昭和29(オ)64 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。 第1 事案の概要:上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入につい…
事件番号: 昭和41(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和42年9月8日 / 結論: 棄却
行政処分は、法令に別段の規定がある場合のほか、その理由附記を欠く故をもつて違法となるものではない。
事件番号: 昭和36(オ)84 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: 破棄自判
所得税青色申告書についてなされた更正処分の通知書に、更正の理由として、「売買差益率検討の結果、記帳額低調につき、調査差益率により基本金額修正、所得金額更正す」と記載されており、また、その審査決定の通知書に、請求棄却の理由として、「あなたの審査請求の趣旨、経営の状況その他を勘案して審査しますと、小石川税務署長の行なつた再…