判旨
他名義の預金の存在や、所得率が著しく低いこと等は、所得税法上の青色申告承認の取消事由に該当し、当該取消処分は適法である。
問題の所在(論点)
他名義の預金の存在や所得率の著しさといった事実が、青色申告承認の取消事由(所得税法上の要件)を充足するか。
規範
所得税法(昭和22年法律第27号当事)に基づき、納税者が帳簿書類を備え付けてこれに取引を記載すべき義務を怠り、又はその記載が不正確である等、青色申告制度の根幹を揺るがす事由がある場合には、税務署長は青色申告の承認を取り消すことができる。
重要事実
上告人は青色申告の承認を受けていたが、税務署長(被上告人)は、DおよびEという他人の名義を用いた別途預金が存在していること、および所得率が実態に比して著しく過少であることを発見した。これらは適正な記帳義務に違反し、青色申告の要件を欠くものとして、被上告人は上告人の青色申告承認を取り消した。上告人は、地区の特殊事情等を主張して処分の違法を訴えた。
あてはめ
まず、DおよびE名義の別途預金が存在することは、自己の取引を正確に帳簿に反映すべき青色申告の義務に照らし、秘匿された資産・所得の存在を推認させる重大な不備であるといえる。また、申告された所得率が実態よりも著しく低い事実は、帳簿の記載内容が真実の所得状況を反映していないことを示している。これらの事実は、青色申告の信頼性を損なうものであり、原審が認定した地区の特殊事情の不存在を前提とすれば、承認を取り消すに足りる正当な事由があると解される。
結論
被上告人が上告人の青色申告承認を取り消した処分は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和39(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和42年9月12日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和二二年法律第二七号で同二九年法律第五二号による改正前のもの)第四六条の二第二項により更正通知書に理由の附記を要するのは、青色申告書提出承認のあつた所得について更正処分のあつた場合に限られ、それ以外の部分に関する更正は、いわゆる白色申告に対する更正と同様に処理されれば足りるものと解すべきである。
青色申告の承認取消における実体的な判断基準を示す。特に「他名義預金」や「異常に低い所得率」といった外形的事実から、記帳の不正確性や隠蔽の意図を推認し、取消事由を認める実務上の指針となる。答案上は、帳簿の信頼性が欠如していることを具体的事実から認定する際の例示として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)64 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。 第1 事案の概要:上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入につい…
事件番号: 昭和37(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 破棄自判
青色申告の更正の理由として「売上計上洩一九〇、五〇〇円」と記載しただけでは、理由附記として不備であつて、更正は違法である。
事件番号: 昭和45(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和49年4月25日 / 結論: 棄却
一、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項による青色申告書提出承認取消処分の通知書には、右取消が同条入項各号のいずれによるものであるかを附記するのみでは足りず、取消の基因となつた事実をも処分の相手方において具体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならない。 二、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)二五条九項…
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…