判旨
課税処分における所得額の算定について、仕入商品に対する利益率を推計により認定すること、および雑損金の有無を原審の判断に委ねることは、法令の解釈に関する重要な主張を含まない適法なものとされる。
問題の所在(論点)
推計による所得算定の適法性、および雑損金の考慮不足の有無が、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」に規定される上告理由(法令の解釈に関する重要な主張)に該当するか。
規範
課税所得の算定において、直接的な資料に基づき実額を把握できない場合、仕入商品に対する利益率等の指標を用いた推計計算によって所得を認定することは許容される。また、必要経費(雑損金等)の認定は事実認定の問題であり、原審が証拠に基づき考慮している限り、上告理由となる法令違背には当たらない。
重要事実
上告人は、税務当局による所得算定の基礎となった利益率の推計方法および雑損金の不算入について不服を申し立て、上告した。原審は、上告人の仕入商品に対する利益率を推計により認定し、また雑損金についても事実関係を検討した上で所得額を確定させていた。
あてはめ
最高裁判所は、原審による利益率の推計は相当であると判断した。また、上告人が主張する雑損金についても、原審の判決文によれば全く考慮されていないわけではないことが明らかであるとした。したがって、これらの事実は事実認定の範囲内であり、特例法上の上告理由には該当しないと評価した。
結論
本件上告は特例法上の上告理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
実務上、課税処分の取消訴訟において、推計課税の合理性や経費の認定は事実認定の問題として扱われることが多く、特段の憲法違反や判例違反がない限り、最高裁における法令解釈の対象とはなりにくいことを示している。
事件番号: 昭和30(オ)735 / 裁判年月日: 昭和33年6月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】推計課税において、特段の事情がない限り仕入品の利益率から売上品の利益率を推定することは合理的であり、課税庁が更正時に使用しなかった資料であっても、それが所得を適正に推計し得るものである限り、更正の正当性を基礎付ける証拠として用いることができる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和26年度の所得税につ…
事件番号: 昭和37(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】課税処分における所得金額の推計に関し、被上告人が採用した所得標準率の作成方法が適正である限り、これを用いて農業所得を算出することは、推計の手法として不相当とはいえず適法である。 第1 事案の概要:上告人は農業所得等の金額算出において、被上告人が採用した所得標準率に不服を申し立てた。具体的には、麦の…
事件番号: 昭和34(オ)267 / 裁判年月日: 昭和35年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】納税者の帳簿が完備せず直接資料を欠く場合、後日の在庫高から過去の平均在庫高を推定して所得金額を算定する推計課税の方法も、合理的である限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和24年度の所得金額について税務署長(被上告人)から更正処分を受けた。上告人の帳簿は不完備であり、正確な所得を直接把握…
事件番号: 平成18(行ヒ)295 / 裁判年月日: 平成19年7月6日 / 結論: その他
納税者が平成12年分の所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益を一時所得として申告したところ,同権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正がされた場合において,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,納税者が同権利行使益を一時所得として申告し,同権利…
事件番号: 昭和39(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和42年9月12日 / 結論: 棄却
所得税法(昭和二二年法律第二七号で同二九年法律第五二号による改正前のもの)第四六条の二第二項により更正通知書に理由の附記を要するのは、青色申告書提出承認のあつた所得について更正処分のあつた場合に限られ、それ以外の部分に関する更正は、いわゆる白色申告に対する更正と同様に処理されれば足りるものと解すべきである。