戦時補償特別措置法第三一条による国税局長の審査決定は、覆審的に課税価格を決定する趣旨であつて、不利益変更禁止の規定がないから、税務署長の更正より多額に決定することも許される。
戦時補償特別措置法第三一条による審査決定に際し原更正よりも増額して決定することの適否。
戦時補償特別措置法31条
判旨
行政上の審査請求において、法律に不利益変更を禁止する旨の明文の規定がない以上、審査庁は原処分の金額を増額する決定をすることが認められる。
問題の所在(論点)
行政不服審査の手続きにおいて、不利益変更禁止の原則が明文規定のない場合にも適用されるか。具体的には、国税局長が審査請求に対し原処分(税務署長の決定)より多額の増額決定をすることが許されるかが問題となる。
規範
審査請求制度の本旨が納税義務者の救済にあるとしても、審査庁は課税の適正を期するために覆審的に課税価格を決定すべき権限を有する。したがって、法律に不利益変更禁止の明文規定がない限り、審査庁が原処分よりも不利益な内容の決定をすることも許容される。
重要事実
納税義務者である被上告人が、税務署長のした戦時補償特別税の更正処分に対し、国税局長へ審査請求を行った。国税局長は、審査決定において税務署長が決定した金額よりも多額の課税価格を決定した。これに対し、被上告人が不利益変更の禁止に反し違法であると主張して争った事案である。
あてはめ
戦時補償特別措置法31条の「これを決定し」という文言は、単に審査請求の当否のみを判断する趣旨に限定されるものではなく、審査庁が改めて適正な課税価格を決定する権限を付与したものと解される。また、当時の法体系において不利益変更を禁止する規定は存在しない。国税局長の決定に対してさらなる行政上の不服申立てが制限されるとしても、それは制度上の設計であり直ちに不合理とはいえないため、適正な課税の実現を優先すべきである。
結論
国税局長が審査決定において原処分よりも増額して決定することは、不利益変更禁止の規定がない以上、違法ではない。
実務上の射程
本判決は明文規定がない場合の判断であるが、現在の行政不服審査法(48条)や国税通則法(90条)等には不利益変更禁止の明文規定が存在するため、実務上はそれら各個別法の規定が優先して適用される点に留意が必要である。法の欠缺がある場合の一般論として、適正な処分と不利益変更禁止の調整を考える際の参考となる。
事件番号: 昭和27(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
財産税法による課税価格の再更正があつた場合の当初の更正の取消を求める訴は不適法である。
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…
事件番号: 昭和33(オ)691 / 裁判年月日: 昭和36年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】更正決定の理由附記欠如は当然無効事由ではなく、取消事由に過ぎない。また、更正決定の取消しを前提とする過納金還付請求訴訟において、当該決定が不可争力を生じている場合、裁判所はその当然無効といえる事情がない限り、公定力に基づき当該決定を有効なものとして取り扱わなければならない。 第1 事案の概要:上告…