一 所得金額更正に関する審査請求の却下決定があつた場合でも、右却下が違法である場合には、右更正処分の取消を求める訴は審査の決定を経たものとして適法である。 二 審査請求書に証拠書類の添付がなく、これに対し補正を求めたにかかわらず補正をしなかつたからといつて、審査請求を却下することは違法である。
一 所得金額更正に関する審査請求の却下決定が違法な場合における右更正処分の取消を求める訴の適否。 二 所得金額更正に対する審査請求書に証拠書類の添付がない場合の補正要求とこれに応じない場合の請求却下の適否。
所得税法51条1項,所得税法49条5項,所得税法49条6項,所得税法48条4項,行政事件訴訟特例法2条,所得税法施行規則48条
判旨
再調査請求における証拠書類の添付義務は、存在する書類があれば添付すべきという趣旨にすぎず、所得税法上の「方式」には当たらないため、不添付を理由とする却下裁決後であっても、審査請求前置を経たものとして処分の取消訴訟を提起できる。
問題の所在(論点)
再調査請求における証拠書類の添付は所得税法上の「方式」に該当するか。また、不当に不適法として却下された場合、訴願前置の要件(所得税法51条)を満たしたといえるか。
規範
行政不服審査において、証拠書類の添付を命じる規定は、当該書類が存在する場合にその提出を求める趣旨と解すべきであり、法が定める不服申立ての不可欠な「方式」を構成するものではない。したがって、不当な不備を理由とする不適法却下であっても、行政庁に再審理の機会が与えられた以上、実質的には訴願前置(審査の決定)の要件を満たしたものとして扱うべきである。
重要事実
納税者である上告人は、更正処分に対し審査請求書を提出した。税務署長はこれを再調査請求として取り扱い、国税局長は「証拠書類の添付がない」ことを理由に補正を命じ、上告人がこれに応じなかったため、不適法として却下した。上告人はこの却下を経て更正処分の取消訴訟を提起したが、下級審は適法な審査決定を経ていないとして訴えを却下した。
事件番号: 昭和50(行ツ)94 / 裁判年月日: 昭和51年4月27日 / 結論: 破棄差戻
課税処分を受けていまだ当該課税処分にかかる税を納付していない者は、右課税処分の無効確認を求める訴を提起することができる。
あてはめ
税務署長の更正(青色申告以外)では理由が付記されないため、納税者が反証書類を添付できない場合があり、所得の不存在という消極的事実の立証には証拠が存在しないこともある。そうすると、証拠書類の添付は、あれば提出せよという趣旨にすぎず、所得税法48条4項の「方式」ではない。ゆえに、不添付を理由とする補正命令及び却下は違法である。このように誤って却下された場合でも、行政庁には審査の機会が与えられていたのであるから、法51条の「審査の決定」があったものとみなすべきである。
結論
本件訴訟は、不当な却下決定によって「審査の決定」を経たものと解されるため、訴願前置の要件を欠くとした原判決は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
行政不服審査における形式的事項の不備を理由とする却下の限界を示す。特に、証拠の提出が困難な性質(消極的事実の立証など)を持つ場合、その不備を理由に門前払いすることは許されず、誤った却下であっても実質的に不服申立手続を経たものとして受訴裁判所は本案審理に進むべきであるとする判例である。
事件番号: 昭和37(オ)305 / 裁判年月日: 昭和38年6月14日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和33(オ)224 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】審査請求の対象は、審査決定書の記載にかかわらず、不服申立人の真意に基づいて客観的に判断されるべきであり、加算税等のみを対象とした場合には所得金額等に関する訴えは適法な前置手続を欠く。また、既存の通知の誤謬を訂正する通知がなされても、それが新たな処分を構成しない限り、訴訟の対象が当然に拡大することは…
事件番号: 昭和34(オ)267 / 裁判年月日: 昭和35年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】納税者の帳簿が完備せず直接資料を欠く場合、後日の在庫高から過去の平均在庫高を推定して所得金額を算定する推計課税の方法も、合理的である限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、昭和24年度の所得金額について税務署長(被上告人)から更正処分を受けた。上告人の帳簿は不完備であり、正確な所得を直接把握…
事件番号: 昭和32(オ)953 / 裁判年月日: 昭和34年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】青色申告書の提出がなかったという原審の事実認定に不服を申し立てる上告については、単なる事実誤認の主張にすぎないため、上告理由として採用されない。 第1 事案の概要:上告人は、所得税等に関して青色申告書を提出したと主張したが、原審は青色申告書の提出がなかったものと事実認定した。これに対し、上告人が原…