判旨
青色申告書の提出がなかったという原審の事実認定に不服を申し立てる上告については、単なる事実誤認の主張にすぎないため、上告理由として採用されない。
問題の所在(論点)
原審による「青色申告書の提出の有無」という事実認定の当否を、上告審において争うことができるか。また、その主張は適法な上告理由となるか。
規範
上告審において原審の事実認定を争う論旨は、民事訴訟法上の適法な上告理由(憲法違反または民訴法312条1項・2項所定の事由)に当たらない限り、採用の限りではない。
重要事実
上告人は、所得税等に関して青色申告書を提出したと主張したが、原審は青色申告書の提出がなかったものと事実認定した。これに対し、上告人が原審の事実認定を不服として上告を申し立てた事案である。
あてはめ
上告人の主張は、青色申告書の提出がなかったとする原審の事実認定を非難するものである。しかし、これは純粋な事実認定の不当を訴えるものであり、上告審が審理の対象とする憲法違反や重大な手続違背等の法的瑕疵を指摘するものとはいえない。したがって、事実誤認をいう論旨は採用できない。
結論
本件上告を棄却する。原審の事実認定を非難する論旨は採用されない。
実務上の射程
事実認定の当否は法律審である最高裁判所の審理の対象外であるという原則(事実認定は下級審の専権)を確認する。答案上は、証拠調べや事実認定の適法性を論ずる文脈で、上告理由の制限を説明する際に参照される。
事件番号: 昭和32(オ)1156 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が原審で未主張の事実を前提とする場合、または原判決に影響を及ぼさない事実を前提とする場合は、上告理由として不適法である。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を提起し、憲法違反を主張した事案。しかし、その主張の前提となっている事実は、原審(控訴審)では主張さ…
事件番号: 昭和32(オ)1027 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】課税処分の基礎となる事実認定において、重要な証拠の検討を怠り、または経験則に反する不合理な前提に基づいて所得を推認した場合には、審理不尽または理由不備の違法がある。本件では、代用醤油の製造可能性や塩の投下実態を十分に審理せずに所得を算出した原審の判断には、事実誤認を招く手続上の不備が認められる。 …
事件番号: 昭和34(オ)660 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が判決の理由を述べる際、第一審判決の理由を引用しつつ、これと矛盾しない範囲で独自の説示を付加して結論を導くことは許される。また、事実認定において個々の証拠判断の理由をいちいち明示しなくても、結論に至る理由が理解可能であれば違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が所得金額を…
事件番号: 昭和41(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和42年9月8日 / 結論: 棄却
行政処分は、法令に別段の規定がある場合のほか、その理由附記を欠く故をもつて違法となるものではない。